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2017.04.04

第一回テレビ討論会総評

第5共和国の歴史でもっとも波乱に富んだと言われてきているこの大統領選挙。 第一次投票、2017年4月23日(日 )に近づき、いよいよ本格的になってきた。3月17日のテレビ討論会は 世論調査で支持率が10%を越える5人で行われたが、4月4日には全候補者11名のテレビ討論会が行われる。その第二回テレビ討論会が始まる前に、第一回のテレビ討論会の各候補者のスタンスをおさらいをしておこう。

【過去の記事】

・フランスの選挙制度と予備選とは

・共和党予備選の結果と左派予備選の見通し
 


 

大イベントのテレビ討論会

フランス大統領選挙でのテレビ討論会は、1974年のValéry GISCARD d’ESTAING(ヴァレリ・ジルカール・デスタン)氏とFrançois MITTERAND(フランソワ・ミテラン)氏が最初で、それ以来必ず第一次投票と第二次投票の間に、選ばれた二人の候補者の間に行われてきた。視聴率もサッカーのワールドカップの決勝戦を上回るほどの熱狂ぶりで、翌日は会社などで全国民が政治評論家になっているかのような賑やかな会話や意見交換で、誰もが興味をもって注目している大イベントだと言えよう。
 
数ヶ月前から「まったく予想できない」と言われてきたこの選挙は、François FILLON(フランソワ・フィヨン)元首相の妻の不正給与疑惑や、社会党の候補者に予想外にも選ばれたBenoît HAMON(ブヌア・アモン)元財務・公会計大臣の支持率停滞など、まさに波瀾万丈の展開を見せてきている。スキャンダルの暴露や誰かの中傷が毎日のように報道されている中、メディアだけでなく国民もそれに飽きてきており、政治的な意見や未来のビジョンを交わす本格的な討論が切実に望まれてきていた。

 

フランス大統領選挙の歴史上、初めての第一次投票前の討論会

TF1テレビ局はそういった国民の意見を汲み、正式に出馬を認められた11人の候補者の中から、世論調査で支持率が10%を越える5人を選び、史上初の第一次投票前のテレビ討論会を開催した。二人の司会者の前で、決められたテーマについて2分ぐらい発言し、視聴者に分かりやすい形でそれぞれのプログラムが比較できるようになっていた。実際、予定より一時間以上オーバーして三時間半ぐらいの討論マラソンになってしまったが、翌日の世論調査やメディアなどで高評価。個人的な事情についての発言が少なく、それぞれの考え、理想、それを実現するための政策など、論証中心に競い合ったところが特に評価された。
人数の関係もあり、お互いに質問しあって論争を競う形式ではなく、左派や右派中派の予備選前に行われた討論会と同様、司会者が提供するいくつかのテーマに関してそれぞれの意見、提案、政策を一方的に述べさせる形式をとった。発言順は抽選で決められ、司会者は発言時間をばるべく均等に与えるようにした。フランス大統領選挙の歴史上初めての第一次投票前の討論会は、それぞれの出馬者の政策や考え方だけでなく、その性格や討論者としての技能も試されたと言える。
 

4月4日は全候補者11名のテレビ討論会

4月4日には初めての大統領選出馬者11人を集めるテレビ討論会が、ニュースチャンネルのBFM-TVとCNEWS(元I-Télé)で放送される。20:40からの放送が3時間半と予想され、参加者の人数が倍以上あるのに、どのように発言時間を均等に与える事ができようかとの懸念もあるが、テーマは大きな三つの質問に絞られている。即ち「どうやって雇用を増やすか」(Comment créer des emplois)、「どうやってフランス人を守るか」(Comment protéger les Français)、「どうやって社会的なモデルを実現できるか」(Comment metre en oeuvre votre modèle social)の三つである。
支持率の低い参加者がいかにそのアイデアを弁論できるかなど、視聴者が楽しみに待っている決定的な討論会になりそうだ。
 

討論会での各代表のスタンス

第六共和国の設立を主張のジャンルック・メランション(Jean-Luc MÉLANCHON)氏
ジャーナリストとの激しい衝突や率直な話し方で有名な極左PG (Parti de Gauche, 左翼党)のジャンルック・メランション(Jean-Luc MÉLANCHON)氏は、今回の討論会では痛烈な皮肉たっぷりの弁舌を振るった。「大統領君主制」と非難する現在の政治界の腐敗や行き止まりを突破するために、第六共和国の設立を主張し、裕福層の課税などで富の再分配を徹底した政治の理想を述べた。また、定年の年齢を60歳に戻すなど、社会的な政策もいくつか提案した。

物事の冷静な見方や右派らしい政策を提案フランソワ・フィヨン(François Fillon)氏
もう一人の経験者でありながら、度重なる不祥事でイメージが大いにダウンしたフランソワ・フィヨン(François Fillon)氏は、意外にもその討論会でそれらの事件について直接的に反論されなかったものの、「政治界の倫理」という言葉が出てくる度にいささかの不快感を隠せなかった。が、予備選での人気の鍵の一つだった落ち着いた姿勢、物事の冷静な見方や右派らしい厳重な政策の提案で、右派の投票者が期待していた一種の安心感を与える事ができたようである。

国粋主義に近い価値観を示したMarine LE PEN(マリンヌ・ルペン)氏
世論調査によると現時点では第二次投票に確実に進出すると言われているFN(Front National、国民戦線)のMarine LE PEN(マリンヌ・ルペン)氏の提案する政治は、主に脱EUと移民の制限という二つの柱からなっている。実際、どのような質問をされても、国境の強化や輸入税の増税などの保護貿易主義的な政策、そしてフランス語優先の教育やイスラム教の過激派の禁止などを提唱したりし、国粋主義に近い価値観を示して他の参加者の猛烈な反論を喫した。

存在感の薄かったBenoît HAMON(ブヌワ・アモン)氏
社会党(Parti Socialiste)のBenoît HAMON(ブヌワ・アモン)氏は、その革新的な政策である「普遍的収入」(revenu universel)の提唱以外は、存在感の薄さがメディアに指摘されている。その「普遍的収入」とは、国民のみんなに支給される追加収入で、貧困をなくすための決定的な政策として紹介された。金額はまだ未定で(600€か)、何よりもその資金調達がはっきりしていない所がユートピアに過ぎないと、批判の的となった。

右派と左派を超越した立場を主張Emmanuel MACRON(エマニュエル・マクロン)氏
世論調査でルペン氏の次に人気を集める、En Marche(前進)党の創立者である、元経済産業大臣のEmmanuel MACRON(エマニュエル・マクロン)氏は、経済的にはリベラルな政策を、社会の面では給料にかかる負担金を減らしたり、商人や職人などの独立業者に失業保険を与えるなど、右派と左派を超越した立場を主張した。討論会中では、ルペン氏を除いて他の参加者との直接の対立を避け、ライバル達に同意したり賛成の意を表したりした場面が目立った。
 

CONTRIBUTORこの記事の投稿者

Julien:エトワライター

Julien:エトワライター

日本人以上の日本語を操る日本文学博士。日本とフランスの文化文学に精通し、教鞭をとる傍ら、通訳、翻訳、同時通訳なども行う。

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