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2018.07.02

在仏日本人会 片川 喜代治会長



1977年総合商社トーメンの駐在員としてパリに派遣され、その後40年間に渡りヨーロッパ、フランス、そして世界の移り変わりを見て感じてこられた、現在仏日本人会片川喜代治会長。
商社時代、パリ商工会議所会頭時代を通じ感じたフランスと日本における考え方の違い、海外在住の日本人としての気持ちの持ち方、そして現在の活動である日本人会の活動や意義まで、様々な話題を前編・後編でお送りします。

商社時代とパリ商工会議所の会頭時代

1977年9月に総合商社のトーメンの駐在員としてパリに派遣してきました。その後、1992年フランストーメン社の社長を拝命し、1998年にフランス社長と兼任でロンドンに赴任となりました。当時どの商社も欧州拠点はロンドンに置いており、欧州、アフリカ、中東の3地域の総支配人を拝命したからです。会社員時代を含め、1977年から今日までずっとフランス及びヨーロッパに在住しているので滞在年数40年を超えたということになります。フランス駐在以前には中近東に7年程いましたので、海外生活はもう少し長くなるでしょうか。

2000年、豊田通商さんと資本・業務提携をし、将来への合併に向けて動き出した3年後に一旦、私はパリに軸足を移しました。パリとロンドンを毎週往復していたので軸足をどちらにしても、仕事に影響はないと判断したものです。
パリに戻ると、当時の在仏日本商工会議所の会頭であった三井物産の北原隆社長から、「現在商工会議所の会頭・副会頭は、三井物産、三菱商事、東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)の3つの会社の輪番制だが、会員の多様性や固定化した体制を考慮すると、別の会社を入れていく時期に来ていると思っているがどう思うか?」と、相談を受けました。それに対し、私は「それは良いアイディアですね。環境の変化に組織を合わせていくのは必要なことだと思います」と答えたところ「それでは、私の後は片川さんにお願いできますか」と打診され、2003年4月から2005年3月まで在仏日本商工会議所の会頭として仕えました。
「開かれた会議所」をモットーとして大幅な組織改革と定款の変更などを行ない、その時作り上げた組織が委員会制度等含めそのまま今日まで続いています。
 

在仏40年、フランスの移り変わりをみて

私がパリに赴任して、一番大きかった事件が、1981年の大統領選で左翼候補のミッテラン氏が現職大統領のジスカールデスタン候補を破り、向こう7年間(当時は)の仏大統領の座を獲得したことです。初の社会党政権の誕生でもありました。仏社会党大統領は第5共和制下では初めてで、EC(欧州共同体)の結束やNATOへの大きな衝撃となり世界政治の構図に大きな変革をもたらそうと報道されたものです。当時の私どもの会社のアメリカの弁護士事務所なんかは、事務所を閉めてアメリカに戻ってしまったほど、インパクトがありました。レクスパンション誌などは、仏経済は崩壊に向かうという厳しい見方をしていました。しかし、実際には「保守党より保守的だ」の意見もでるくらい、変わらないのが現状でした。というより、この国はそもそも社会主義的な感覚を持っていますから、日本であれば政府が口出さない案件でも、この国は平気で介入しますしね。左翼のミッテラン大統領の頃からというより、元からそういう傾向がありました。日本だと、一部の企業だけが恩恵受けるような動きやお上が民間に口を出したりすると必ず叩かれますが、この国では国益になることであれば民の仕事にも官が手を差し伸べるというのは当たり前のことです。

去る4月にサウジアラビアの皇太子が3日間パリを訪問。この時18に上るプロトコルダコールが観光、エネルギー、そして交通分野にて合意されています。これらの公式契約書の署名の為にマクロン大統領が年末までに同国を訪問することになっています。その時は、関係の民間企業の代表者を連れて行くのがこの国の慣例です。日本もこれからこのような方向に行かざるを得ないと思いますし、既にその兆候が表れています。国益になることは「これは民間の仕事だから」と、政府が関与しない時代はもう終わったのではないでしょうか。少子高齢化のなかで、バランスが取れた経済規模を日本が生み出すことが出来るかが課題でしょうね。フランスの人口は日本の半分くらいで、GDPからすると日本の1/3と小さいながらもそれでもみんなバカンスを取っていて、人生とか人一人の幸せという意味で言えば、こちらの人のほうが楽しんでいますよね。
 

日本の平等、フランスの平等

フランスの平等の考え方は、「平等ではないという平等」なんですね。
フランス人は、確かに個を大事にしている。個の自立を認めている平等だけれど、個々はみんな違う、才能も違うし、顔も違うし、家柄も学歴もみんな違うという「平等でない部分を認めた上」でお互いにリスペクトするという民主主義デモクラシーです。日本も戦後この平等主義を取り入れましたが、その取り入れ方はいつの間にかどんな人もみんな一緒という、「横並びの平等主義」になっていきました。
しかし、同じ人間なんて一人もいないということを日常生活のレベルで嫌でも知らされるというのが我々の現実の生活なんですね。にもかかわらず、上の方からは平等だ平等だと言われている。そのギャップというかその落差に人間というのは段々耐えられなくなる。我々の社会というのは、人間というのは本来は皆不平等なんだよというメッセッジは一言も言わない、言えない。言わないことが民主主義であり、平等主義の本来の在り方だとだんだん思うようになっていくし、そう思うようにさせられてきたという気がしますね。
フランスの学校では進級が難しいかなという子は落級させます。つまりは「その子の能力」に合わせて対応します。日本では出来るだけみんな一緒に進もうという精神で「頑張れ!」と無理やり進級させようとします。どう頑張っても出来ないことがあることを認めようとしないというか。

そして、もっと厄介なことにこのような横並び平等主義は自分と他人を比較するという比較社会を作り出しました。近代西洋諸国と比べてコンプレックスを持ち、途上国のアジア諸国と比べてうぬぼれる。そういう側面がこの日本列島人には存在しますね。より進んだものにはコンプレックスを感じ遅れたものと比較して妙な自信を持つ。こういう比較の仕方も日本人の固有のものと私は思います。
この何事も比較する性格が高まっていくと嫉妬する感情を生みます。妬み恨みの感情ですね。この嫉妬感情も、露骨に表に出せば、叩かれますから、内に秘めて溜めていきます。そして、それが沸点に達すると爆発するわけです。一見経済が安定し人々の生活も豊かになったように見えますが、一皮むけば、列島のいたるところに比較と嫉妬から生まれた怨念が埋め込まれているように思えます。怨念は殺意となりそれが外部に向かっていくとき信じられない事件に繋がっていきます。「相手は誰でもよかった」と加害者が供述した6月9日の新幹線殺傷事件にこのような社会的背景を感じざるを得ません。

フランスの日本人社会における「フランス的な自立」

海外の日本人コミュニティにおいても狭い世界ですから、自分の考えややってみたいことを前面に出したいと思っても、それは出る釘のように見られてしまう恐れを日本人であればもつかもしれない。でも、そもそも自分が目立ちたい為に意見を言ったり、行動をとっているわけじゃないですよね。外部の人たちが、仮にそう取ったとしても、自分が「そうじゃない」と、分かっていればいいわけです。フランス人的な自立でしょうか。自分に自信があってやっていることだったら、人がどう思おうとも、自分の信念を貫く事が大事だと思うんです。

ただ、日本人で日本の文化を持ちながら、フランス人の自己主張の部分を過度に取り入れてフランス人以上にフランス的になっている方を時々見受けします。フランス人は、生まれた時から自分の権利を大事にする(主張する)という教育の中で育ってきているので、「権利」を上手なバランスで使っていると思いますが、私たち日本人は権利があることは分かっていてもそういう「自分の権利を主張する」という世界では育ってきていないので、そのバランスと解釈を間違ってしまうと、仏人でもなく日本人でも無くなってしまうということになりかねませんね。
 

どこの国にいても、一番大切なのは考え方

「こんなこと言ったらでしゃばりだと思われるかも」と考えるより前の段階の話ですが、自分を高める努力をするってことが大事じゃないですかね。
一番大事なことは「考え方」。考え方がしっかりしていることが大切です。短期間でJALさんを再生させて高名な京セラ・第二電電(現・KDDI)創業者である、稲盛和夫さんは、人が成功するためには、3つの要素、「能力×熱意×考え方」の掛け算であるとおっしゃっています。 稲森さんは、その内、能力と熱意は0点から100点まであるけれども、考え方は、-100点から+100点まであるとおっしゃっています。
能力が高くて熱意のエネルギーは十二分にあるけど、考え方が間違っていると、凄いマイナスになってしまうということです。つまりは、正しい考え方を身に着けるということが、実は、凄く大事なことです。今日本で起こっている文書の改ざん問題やアメフト悪質タックル問題も、正しい考え方に立脚した判断がされていないからと思います。能力や熱意は誰よりも優れた人たちなのにと思ってしまいます。

どんな物事にたいしても、正しい考え方っていうのは絶対あると思います。それをどうやって養っていくかというと「本を読む」ことだと私は思います。昔から読み継がれてきている本からも学ぶことが出来ます。孔子・孫氏の言葉は、2500年前から風雪に耐えて読み継がれてきているものであり、そこにはみんな納得する哲学とか考え方の本質があります。それは普遍なんですよ。だから、そういう書物を読みながら、「なるほどこういう考え方をするんだ」と身に着け、自分の考え方を養っていくっていうのが大事なことのように思います。そういうものがちゃんとバックにあってこそ、いろんな会合やミーティングで自分の考えが出てくるようになるんだと思いますし、それにはちゃんと説得力も出て来ます。 もちろん、迷いがあって発言していいんですよ。でもちゃんとしたベースに裏づけされた発言っていうのに対し、悪いこという人はいないはずです。逆にみんな納得すると思うんですね。でも「こんなこといったらまずいかな」といった、自分が自分で不安をもって発言をしたらそれはそのとおりに取られてしまいます。不安の部分は聞いてるほうにも伝わりますから、説得力がなくなります。「言っていることが正しくても、説得力がない」という時は、まずは自分がきちんと発言できたかを振り返ることも大切ですね。
インタビュー後編は、在仏日本人会の活動や今後の展望についてです。後編もお楽しみに。
 

片川喜代治
在仏日本人会 会長 兼 ジャポニスム2018応援委員会 会長
1978年、総合商社の駐在員としてパリに赴任。その後、ロンドン、ハンブルグと移動をしながらも、常にパリにての役職を兼任し、今年で在仏年数40年。2017年、日本人会総会にて会長を拝命。
 

在仏日本人会
AssociationAmicale des Ressortissants Japonais en France (A.A.R.J.F)
1958年設立、フランス政府公認 非営利の公益団体。
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