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2019.05.07

大仏が歩き出す戦前の幻の特撮・大仏廻国 リメイク版がパリで上映



1954年に映画『ゴジラ』が世に出る20年前、すでに日本最初期の特撮映画が撮られていました。戦前の映画監督・枝正義郎によって撮影された映画『大佛廻國・中京篇』(以下『大仏廻国』)です。
 
作品の内容は、人々の祈りに応じた聚楽園大仏(現在も愛知県東海市に鎮座)が立ち上がり、名古屋と近郊の名所を巡るというもの。その現代リメイク版が5月13日と19日にパリで上映されます。
『大仏廻国』とは一体どんな映画なのか? パリエトワ編集部が、リメイク版を撮った映画監督の横川寛人さんと、聚楽園大仏の建立者・山田才吉のひ孫である守隨亨延さんに、お話をうかがいました。
 

ゴジラが生まれる20年前に存在した幻の特撮


──『大仏廻国』とはどんな映画ですか?
 

横川さん:1934年に公開された特撮映画です。その後の怪獣映画などにつながる日本の特撮最初期の作品と言われています。同映画を撮影した枝正義郎監督は、『ゴジラ』や『ウルトラマン』の製作に携わった特撮の神さま・円谷英二を映画の世界に引き入れた師にあたる人でした。ハリウッドで学んだ最先端の特撮技術を生かして、当時日本で一番大きかった愛知県上野村(現在の東海市)の聚楽園大仏を動かすという特撮映像を作りました。
 
守隨さん:聚楽園大仏自体も、当時最新だった鉄筋コンクリートの工法を用いて1927年に造立されました。その後、日本各地には同様の工法で建てられた大仏が増えていきますが、聚楽園大仏はその最初期のものでした。つまり、どちらも当時は最先端のことをしていたわけです。


愛知県東海市 聚楽園大仏
 

──なぜ『大仏廻国』のリメイクをしようと思ったのでしょうか?
 

横川さん:元々私が映像の世界へ進んだのは『ゴジラ』など怪獣映画がきっかけでした。それら特撮作品に興味が向く中で『大仏廻国』を知りました。ところがフィルムは、第二次大戦中および戦後の混乱で失われてしまっていました。現在は当時の新聞や雑誌の記事から内容を推測するしかありません。もし作品が見られないのであれば自分で作ってみようと思い、まず枝正監督の孫である佛原和義さんに連絡。許可をいただき、その後クラウドファンディングで映画の企画を立ち上げました。
 
守隨さん:曽祖父が建てた聚楽園大仏が動き出す『大仏廻国』という映画があったことは知っていました。しかし、まさかリメイク企画を立ち上げ、枝正監督のお孫さんの許可まで取っている人がいるとは思いませんでした。この企画を知った時は本当に驚きまして、それなら大仏の建立者側として何か後押しをしたいと思いました。
 

新コンセプトに特撮ファン馴染みの俳優陣をキャスティング


──リメイク版は戦前のオリジナルを再現する形で作られているのでしょうか?
 

横川さん:大仏が動き出すというコンセプトはそのままですが、物語自体は新しく作り直しています。これは佛原さんが「思いっきり新しいことをやってほしい」と応援してくれたからということもあります。ただし一部ではオリジナルの要素も踏襲しています。『大仏廻国』が公開された1934年頃の日本は、国内不況、満州事変から日中戦争へ向かい社会を覆っていた大陸進出の雰囲気、三原山での心中ブームなどがありました。1934年の『大仏廻国』は、ただ名所を巡るだけではなく、それら当時の雰囲気に対する描写も含まれていたようでした。当時起きていた社会状況は現代の日本にも通じるところがあると思い、一部でリメイク版のストーリーに込めました。


左から、横川寛人監督、ドイツ首相役を演じるインゲ・ムラタさん、守隨亨延さん
 

──どうしてヨーロッパで上映することになったのでしょうか?
 

守隨さん:もし曽祖父が生きていたら、何を思うだろうかとまず考えました。実業家だった曽祖父は目新しいことを好み、事業としてそれらを次々と形にしていった人でした。人を驚かせることが好きでした。そのような曽祖父ですので、大仏を再び歩かせたいという横川監督の考えを聞いたら応援したと思いますし、もし大仏が国内を飛び越えて海外で歩いたら喜ぶだろうなと想像しました。私は仕事の関係でパリにいるため、フランスにイギリスとドイツを加えた3カ国で上映しないかと横川監督に尋ねました。結果、横川監督が作り上げた新しい映画のおかげもあって、ヨーロッパで大仏が歩くことが決まりました。
 

──宝田明さんをはじめ特撮ファンには馴染みの俳優さんが出演していますよね。
 

横川さん:今まで私が好きだった特撮・怪獣映画に出演している俳優さんに出てほしいと思いました。そうなると第1作目の『ゴジラ』から出演している宝田明さんは外せません。宝田さんがオファーを受けてくださった時は本当にうれしかったです。他にも久保明さん、ペギー・ニールさん、螢雪次朗さんなど、特撮映画のレジェンドやいぶし銀の俳優さんが出てくださいました。大御所の方に加えて、菊沢将憲さん、元NMB48の岩田桃夏さんなどが作品を豊かにしてくれました。
 
守隨さん:キャスティングが決まる毎に監督から連絡をいただいていまして、宝田さんの時は、特にうれしかったです。山田才吉というのは祖母の父で、私の姓である守隨は祖父の姓です。その守隨の祖父は、戦前の一時期、満州で暮らしていたことがありました。その際に祖父は宝田明さんのお兄さんと職場が同じで仲が良かったそうです。宝田さんのお兄さんの元に、当時幼かった明さんがお弁当を届けに来ていたという昔話も聞いていました。日本へ引き揚げた後は、宝田家とは疎遠になってしまったものの、今回の作品を通して同じものを再び共有できたことに縁を感じています。


左側 ゆうまさん、右側 螢雪次朗さん
 

リメイクとは過去を未来に伝えていくこと


──今回のリメイクは今後にどのようにつながっていくと思いますか?
 

横川さん:今回のリメイクを通して考えたのは、過去の作品をどのようにしたら未来へ引き継げるかということでした。一つの作品を次の世代に渡していく時に、リメイクはとても大切な役割を持っています。例えば『スター・ウォーズ』シリーズは、今はオリジナルの時とは違ったスタッフで製作されています。しかしリメイクすることによって新たなファンが増え、作品のその後を支えてくれます。約80年前に『大佛廻國・中京篇』という映画があり枝正義郎という監督がいたんだということを、今回の映画化をきっかけに知ってもらいたいです、これを機会に、どこかで『大仏廻国』の戦前のオリジナル・フィルムが見つかればうれしいです。
 
守隨さん:ヨーロッパ上映を5月19日のパリで終えた後、5月21日には聚楽園大仏が92歳の誕生日を迎えます。そして6月1日には聚楽園大仏のすぐそばにある東海市しあわせ村のホールでリメイクされた『大仏廻国』の上映があります。今回の企画についてもそうですが、聚楽園大仏をはじめ曽祖父の足跡が残る数々の文化遺産についても、次の世代に伝えていくことの大切さを私も感じています。あの世にいる曽祖父も、今回のリメイクについて横川監督に感謝していると思いますし、喜んでいるのではないでしょうか。


 
 

『大仏廻国 The Great Buddha Arrival』パリ上映

日時:2019年5月13日20時〜・19日11時30分〜
場所:13日は天理日仏文化協会、19日は映画館Grand Action
予約:『大仏廻国』公式サイト内の予約フォームより申し込み可能
 

CONTRIBUTORこの記事の投稿者

エトワ編集部

エトワ編集部

Paris et toi(パリエトワ)編集部です。皆さまのお役に立つ記事を執筆します。

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