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columnアートコラム

2020.06.22

ジャックマール・アンドレ美術館ターナー展


オスマン大通りから見る、ジャックマール・アンドレ美術館の外観

オスマン大通りにあるジャックマール・アンドレ美術館はロックダウン解除後、他に先駆けて真っ先に再館した。水彩画の黄金時代を築いたロマン主義の大家ターナーの世界最大のコレクションで知られるテート・ブリテンに収蔵されている作品から、水彩画60点、油彩画10点が選りすぐられて、18世紀末から19世紀半ばまで、ほぼ年台順に展示されている。

ターナー(1775-1851)は初期には建築をテーマにした作品や写実的な風景画を残しているが、20歳台で画家としての名声を確立したという。19世紀前半までフランスを中心とした西欧では絵画のヒエラルキーがあり、上位を占めていた歴史画、肖像画でなくターナーは風景画に取り組み、その新境地を水彩画で開いた。しかも32歳で王立アカデミーの美術学校の教授になっているところを考えると、フランスよりもイギリス画壇の方が明らかに柔軟だったようだ。

風景に魅せられて画題を求めて飽くことなく各地遍歴し、イギリス国内はもとより、オランダ、ベルギー、フランス、イタリア、スイスに何度も足を運んだ。中でもヴェニスで描いた水彩画は、展覧会でもひときわ目を引き、同展のポスターにもなっている。


黄昏のヴェニスのラグーナ(潟)(1840)、 ポスターに使われた

孤高の画家といわれるターナーだが、実は様々な画家からの影響を受けている。中でも17世紀のフランスの歴史風景画家クロード・ロラン(ジュレ)の抒情的な絵画を想起させる作品が数点展示され、パリ展であることからか、ロランとの系譜が強調されている。


リッチモンド・ヒルの光景(1808)


金の小枝(1834)古代ローマ詩『アエネーイス』に触発された作品
上2点とも、歴史風景画家ロランの影響が濃厚。


ターナーと言えば、よく印象派の先駆と言われるが、光と色彩の探求は、来る印象派を先取りしまったような感がある。実際モネやルノワール、ピサロは、1870年代にロンドンでターナーの風景画に接して、深い感銘を受けている。


レマン湖(1841)
少々赤ずむグレーの空、単純化された山々が湖に映るブルーの鏡像が、水彩画ならではの独特の詩情を醸し出している。


また、同展ではターナーが使っていた画材も展示されているが、野外で描いたスケッチを元に、試験管のような色彩の粉末パレットを使ってアトリエで仕上げていた。
晩期には、抽象画の域に達している作品を多数残しているが、嵐に荒れる海を描いた画もその一点。

 
晩年ノルマンディーで描いた日没などの珠玉の風景スケッチ。
余白のとり方が水墨画のようである。
『イルカと荒れる海』(1835-1840)空と荒れ狂う海が一体化してドラマチックな効果を醸し出し、もはや抽象画の域に達している。
 


同展は当初7月末までの予定であったが、新型コロナの影響で来年1月まで延長になった。今のところ完全予約制。人数制限のお陰で、作品と親密な空間の中で満喫できる。
貴族の邸宅であった美術館の見学もお忘れなく。
www.musee-jacquemart-andre.com


執筆者


林 正和   Masakazu Hayashi
パリガイド通訳サービス主宰

大阪生まれ。パリ在住あしかけ36年、東京外国語大学卒業、マスコミ関係の仕事を経て パリ第三(ヌーヴェル・ソルボンヌ)大学で博士号取得。
現在美術館および観光ガイド、通訳、コーディネートを幅広く手がける。
フランス政府公認ガイドライセンス有

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