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columnアートコラム

2020.08.14

セザンヌと巨匠、イタリアの夢

CEZANNE ET LES MAÎTRES
RÊVE D'ITALIE

マルモッタン美術館 - 2020年2月27日から2021年1月3日まで -
 

セザンヌとイタリアとの関係を浮き彫りにする異色の展覧会だ。
17世紀以降プッサンをはじめ多くの仏画家はローマで絵画を学んだ。その意味で仏絵画の発展はイタリア絵画に負っているともいえる。
『近代絵画の父』といわれるセザンヌは、生涯イタリアに行くことがなかったが、フランスで最もイタリア的ともいえるエクス出身で、プロヴァンスのモチーフを頻繁に描き、若い頃ルーヴル美術館等で様々なイタリア巨匠の作品を模写していた。中でもヴェニス派から絵の色彩、コンポジション等大きく影響を受けたという。

16世紀から17世紀にかけて活躍したティントレット、ジョルダノ、エル・グレコなどとセザンヌの作品が対比して展示され、特に古典的な構図の影響が検証されている。
 
ティントレット『十字架降下』(1580年作)
Strasbourg, musée des Beaux-Arts
© Photo Musées de Strasbourg, M. Bertola
セザンヌ『絞殺された女』(1875-76)
Paris, musée d’Orsay
Donation de Max et Rosy Kaganovitch, 1973
© Musée d'Orsay, Dist. RMN-Grand Palais / Patrice Schmidt

巻頭を飾るのはティントレットとセザンヌの2点の比較で、三角形的構図の影響を示す。セザンヌにしては激越なロマン派的な作品であるが、子供の頃からの友達であったゾラの夫殺しを扱った『テレーズ・ラカン』に触発されて描いたようだ。
 
ティントレット『キリストの死の哀悼』(1580)
Paris, musée du Louvre, déposé au musée des beaux-arts de Nancy
© RMN-Grand Palais / Agence Bulloz
セザンヌ『殺害』(1870)
National Museums Liverpool, Walker Art Gallery. Purchased
with the assistance of Art Fund in 1964
© National Museums Liverpool, Walker Art Gallery
同じく、斜線による動きの表現や対角線のコンポジションの構図が説明されている。ただ構図だけでなく、構図と色彩が有機的に連動してある種のフォルムを生み出していることの説明がないのは少々不満が残る。
 
エル・グレコ『若い女性の肖像』
Collection particulière
© Valentina Preziuso
セザンヌ『エゾイタチの女性』(1885-86)
Avec l’aimable autorisation de la Daniel Katz Gallery, Londres
© Daniel Katz Gallery London

 

セザンヌはグレコからインスピレーションを受けたことを述べているが、セザンヌは単に模写するのではなく、長くほっそりした顔型と冷たい色調で何か内面性をエグリだしたような独自な肖像画にしたてた。
 
プッサン『バッカスとセレスの風景』(1625-28年作)
© National Museums Liverpool, Walker Art Gallery.
Presented by the Liverpool Royal Institution in 1948
セザンヌ『田園詩』(1870年)
Paris, musée d’Orsay
© RMN-Grand Palais (musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski

生涯ほとんどローマで過ごしたプッサンと彼に傾倒したセザンヌへの影響はいっそう明瞭に見てとれる。
 
後半では、1920年代にミラノで起こったノヴェチェントという芸術運動に属する画家が、新しい表現を志してセザンヌを賛美したが、その影響を受けた作品が一同に会している。セザンヌからの影響で、構図と斬新な色調が共鳴して独自なフォルムを生み出している。


左:ソフィッチ『丘の上の夕方の眺め』(1952)/ 右:セザンヌ『プロヴァンスの景色』(1879-82)
Photo : © パリガイド通訳サービス

 
セザンヌ『5人の水浴女』(1900-1904)
Paris, Musée d’Orsay. Donation de Philippe Meyer, 2000 
© RMN-Grand Palais (musée d'Orsay) / Adrien Didierjean
モランディ『水浴女』(1915)
Italie, collection de la Fondation Cariverona
© collection de la Fondation Cariverona

最後を飾るのは瞑想的な静物画で有名なモランディの作品が並べて展示され、静謐さを一層感じさせる。

左:モランディ、静物画(1945-55)/ 中:セザンヌ『ナシと緑リンゴの静物画』(1873)/  右:モランディ、静物画(1960)
Photo : © パリガイド通訳サービス

ところで、モネのコレクションで有名なマルモッタン美術館でどうしてこの展覧会が開かれているのであろうか。
セザンヌは確かに印象派に発したが、同展でも引用されている『印象派から何か美術館の作品のような堅固なものを生みだしたかった。』の言葉にあるように、印象派とは別の道をすすむ。モネは光の変幻するさまを描こうとしたのに対し、セザンヌは何か不変なものへの追求が強く、その背後には古典的性格を受け継いでいたことを浮き彫りにするのが、同展のねらいであったようだ。
 
新型コロナの影響で、本来終了しているはずだった同展は来年1月までに延長されたので是非見ていただきたい。なお、じっくり鑑賞したい方は、21時まで開館している木曜の夜は空いているのでおススメです。


CEZANNE ET LES MAÎTRES
RÊVE D'ITALIE

Musée Marmottan Monet - du 27 février 2020 au 03 janvier 2021 -
公式サイトはコチラ
 

執筆者


林 正和   Masakazu Hayashi
パリガイド通訳サービス主宰

大阪生まれ。パリ在住あしかけ36年、東京外国語大学卒業、マスコミ関係の仕事を経て パリ第三(ヌーヴェル・ソルボンヌ)大学で博士号取得。
現在美術館および観光ガイド、通訳、コーディネートを幅広く手がける。
フランス政府公認ガイドライセンス有

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