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columnアートコラム

2021.06.24

アンリ・カルティエ=ブレソン(HCB)展

コロナ緩和で、企画展が堰を切ったように開かれている中、フランス国立大図書館(BNF)で開催中のアンリ・カルティエ=ブレソン(HCB)展は必見だ。
 
『20世紀の目』と言われ、世界各地に赴いた報道写真家(フォトジャーナリスト)としてだけでなく、被写体を独自の美学による構図で切り取り、新たな写真表現を切り拓いたカルティエ=ブレソンの写真の数々はよく知られている。が、今回はこれまでの写真展とはひと味違う。カルティエ=ブレソンの写真に見慣れていても、新しい発見があるに違いない。

カルティエ=ブレソンは1973年、写真家としてのキャリアに終止符を打ち、デッサン、美術に傾倒しかけていた時に、膨大なクリシェから385点自選コレクションとしてプリントした。それをベースにして、5人の識者がキュレーターとして招かれて、各々さらに50点セレクトした。しかも、展示空間から、レイアウト、デザイン 、額にいたるまでゲストキュレーター自身のアイデアに拠っている。我々は否が応でも各キュレーターの主観的な視点を通して、カルティエ=ブレソンの写真を見直すというわけだ。事実同じ写真が何度も出てくるが、見方が異なれば、写真も違ったように見えてくる。
展覧会の副題le Grand jeuはカルティエ=ブレソン自身が大きく負っていると言うシュルレアリスム運動の雑誌名であると同時に、jeu(遊び)に私jeをかけ、キュレーターの主観性を前面に出したという。

top_hcb_BnF
オブナーのセレクションから。 右上・コレットのポートレイト 中央上・ジャコメッティ その下・カーテンが新聞を読む人の顔に巻きついている写真
Photo : ©パリガイド通訳サービス

 
前回執筆したピノー財団はカルティエ=ブレソンの数多くのオリジナルプリントを有しており、HCB財団と並び同展のパートナーである。
であるから、キュレーターの筆頭にフランソワ・ピノーが招かれているのは当然であろう。単純明快な作品のセレクトで、着飾らないデザイン、HCBの写真の魅力を『真実』『簡素』『謙虚』という三つの言葉で括る。
 
映画監督ヴィム・ヴェンダースは入り口にHCBが愛用したライカと第二次世界大戦中捕虜としてHCBが捕らえれた時の写真を展示し、暗く親密な空間の中で、ブレソンヘのオマージュを捧げた映画のコマ撮りを見せるようなつくりにした。
その他にスペイン作家ハビエル・セルカス、アメリカの写真家アニー・リーボヴィッツのセレクションも興味深いが、私が最も共感を得たのは、写真の専門家であり、これまで数々の展覧会を手がけてきたシルヴィー・オブナーのセレクションとレイアウトである。思いがけない共通点を捉えた写真の展示の仕方のセンスがいい。

二人組みシリーズ : 右・北海道(1965) 中央・ワシントン(1957)  左・ナポリ(1960)
Photo : ©パリガイド通訳サービス

 
今回一番人気に挙がったのが、ジャコメッティのこの有名なショット。雨が降っているのかレインコートを頭からかぶって道を渡るショットであるが、まるでジャコメッティ自身が彫った細長い彫刻になったかのようで可笑しい。カルティエ=ブレソンは彼のアトリエで数多くポートレイトを撮っているが、この偶然に撮った写真こそが、彼を雄弁に物語っている。
その他シュールでユーモアのある写真が数多いが、カーテンが新聞を読む人の顔に巻きついている写真も、瞬間を軽快にとらえ、無意識や偶然性に重きを置いたシュルレアリズムの影響が色濃くでている。
コレットのポートレイトも代表作である。カメラマンを超えて、我々まで突き通すような鋭い視線に凄みがある。
 
Henri Cartier-Bresson. Bougival
ブージヴァル : ピノーがイチオシする写真。
Henri Cartier-Bresson. Bougival, France, 1956.
Épreuve gélatino-argentique de 1973
© Fondation Henri Cartier-Bresson / Magnum Photos
Henri Cartier-Bresson. Alberto Giacometti
ジャコメッティのこの有名なショット。
Henri Cartier-Bresson. Alberto Giacometti, Rue d’Alésia,
Paris, France, 1961.
Épreuve gélatinoargentique de 1973
© Fondation Henri Cartier-Bresson / Magnum Photos

隣のスペースではブルトンの自伝小説『ナジャ』の手書き原稿が発見されたのを記念して、シュルレアリズム運動についての展覧会も同時開催されているので、あわせて見ていただきたい。
 
また長年の閉館後最近再館したカルナヴァレ博物館でも、カルティエ=ブレソンのパリで撮った写真に焦点をあてた回顧展が開催中だ。
 
Bnf Fraçois-Mitterrand
www.bnf.fr/fr/agenda/henri-cartier-bresson
Henri Cartier Bresson 展、2021年8月22日まで
L’Invention du surréalisme 8月14日まで
(要予約)
Musée Histoire de Paris Carnavalet : Henri Cartier-Bresson, Revoir Paris 10月31日まで
www.carnavalet.paris.fr/expositions/henri-cartier-bresson-revoir-paris
(要予約)
 

執筆者


林 正和   Masakazu Hayashi
パリガイド通訳サービス主宰

大阪生まれ。パリ在住あしかけ36年、東京外国語大学卒業、マスコミ関係の仕事を経て パリ第三(ヌーヴェル・ソルボンヌ)大学で博士号取得。
現在美術館および観光ガイド、通訳、コーディネートを幅広く手がける。
フランス政府公認ガイドライセンス有

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