仏出版社Ki-oonのキム・ブデン氏が7月9-12日開催の日本文化イベント「ジャパン・エキスポ」でインタビューに答え、日本人漫画家によるフランス向け作品を日本に逆輸出するようになった経緯などを説明した。
漫画業界においては長年にわたり、仏出版社が日本でライセンスを取得し、仏訳をフランス市場で販売する流れが一般的だった。この潮流に対して、日本人の漫画家を自ら発掘し、フランス向けの作品を制作し始めたのがKi-oonである。同社は、2015年10月に東京の事務所を開設。事務所の責任者に抜擢されたキム・ブデン氏はまず、長期連載のできる新人作家の発掘に着手した。同社が既にライセンス契約を結んでいる出版社と競争関係にならないように、「実績がある漫画家や成功している漫画家とは契約しない」というルールを設定。1年半近くの時間をかけて最初の作家を発掘したという。
作家を見つけた後には、仏出版社と漫画を直接制作することを漫画家に説得するという壁も立ちはだかった。ブデン氏は『Beyond the Clouds 空から落ちた少女』や『DOGA』の作家を例に挙げ、「最初は詐欺だと思われたこともある」と打ち明けた。漫画家たちを安心させるために、Ki-oonはプロジェクトに関する打ち合わせや、ネームの確認、章ごとの細やかなフォローなど、日本の大手出版社と同じスタイルを踏襲。さらに、定期連載を主体とする日本とは異なり、家族や別の仕事に時間を割けるように余裕をもたせたスケジュールも売りにした。現在では日本の出版社との信頼関係も生まれ、講談社からは漫画雑誌『アフタヌーン』の「四季賞」で落選した作品を紹介してもらうなど、漫画業界のエコシステムに組み込まれるまでになった。
やがて、Ki-oonは、仏市場向けの漫画を日本で出版するという試みにも取り組んだ。日本の出版社は、自社で作品を制作するので、海外の漫画ライセンスを取得するという習慣自体がなかった。そのため、ブデン氏は出版社を回って、PDFの邦訳作品を持ち込むという営業活動を精力的に実施。その努力が実を結び、現在では講談社、集英社、角川書店、双葉社などの大手出版社によって、Ki-oonの作品全体の75%程度が日本で出版されている。ブデン氏は成功の要因について、新ジャンルや新たなアプローチを求める編集者にとって、海外で既に成功を収めている作品を編集長に推薦しやすい点を挙げた。また、過去10年間で、日本の漫画市場の70%がデジタル媒体に移行したことも指摘。発表コンテンツの量が増える一方で、編集チームの拡大が追いついておらず、Ki-oonのライセンスを取得することは、時間の節約にもなるという。 今後の目標としては、作品のアニメ化、実写映画化、グッズ展開を掲げ、「今後数年のうちに実現する」と自信をのぞかせた。Ki-oonは、日本の大手グループのようにメディアミックスの展開も目指している。