欧州連合(EU)と米国の間で7月27日に関税合意が成立した。英スコットランドで欧州委員会のフォンデアライエン委員長がトランプ米大統領と1時間超会談し、合意に達した。トランプ大統領は、8月1日までに合意できない場合、EUからの輸入品に30%の関税を課すと予告していたが、15%の関税率で合意した。
詳細は向こう数週間を費やして調整される見通しだが、合意の大筋は以下の通り。
●米国はEUからの輸入品の大部分に一律15%の関税を課す。自動車、半導体、医薬品なども対象に含まれる。なお、自動車には4月から27.5%の関税が課されていた。
●航空機・航空機部品、一部の化学品、一部の後発医薬品、半導体装置、一部の農産物、天然資源、重要原材料などの戦略製品に関しては、互いに無関税とする。対象品目は、今後の協議で追加される可能性がある。
●現在50%の関税が課されている鉄鋼とアルミニウムに関しては、別途に交渉が行われる見通し。
●EUは向こう3年間で7500億ドル(6400億ユーロ)相当のエネルギー製品を購入し、また、6000億ドルを米国に投資する。さらに米国から「大量の」軍事装備品を購入するが、その規模は今後に決まる。
フォンデアライエン委員長は、15%という関税率について、軽微とは言えないが、獲得できる最良の関税率だとコメントした。トランプ大統領の復帰以前に、米国はEUからの輸入品に対して平均4.8%の関税を課していた。トランプ大統領が発動した一律10%の「相互関税」により、EUからの輸入品にはすでに実質的に15%近い関税が適用されており、EUは今回の合意により関税率を現状並みにとどめて、30%の関税の発動を回避したことになる。
なお、合意はEU加盟国の承認を得る必要がある。EU加盟国中で、対米貿易黒字が特に大きいのはアイルランドとドイツで、イタリアとフランスがそれに続き、オーストリアとスウェーデンも黒字。ドイツのメルツ首相は、関税のいっそうの軽減を期待していたとしつつも、貿易紛争の無用なエスカレートが回避されたと合意を歓迎した。親トランプ派として知られ、米欧対立の板挟みになっていたメローニ伊首相も、西洋内での貿易戦争を回避する合意だと称賛した。