仏大手銀行クレディアグリコルは、配当金脱税事件(いわゆるCumCum)に関して、仏司法当局による制裁を受け入れた。8825万ユーロの罰金の支払いに応じた。司法取引の内容をパリ地裁が9月8日に承認し、PNF(金融犯罪全国管区検事局)は刑事事件での訴追を打ち切った。
この事件は、2018年に公表された国際調査報道から明るみに出た。非居住者には配当金課税がなされないことに着目し、配当発生時に貸株取引等を行って所有権を一時的に非居住者に移転するという手口で脱税がなされていたというもので、クレディアグリコル銀行傘下のCacib(投資銀行)は、この種の取引に手を貸して手数料収入を得ていたことが問題視されていた。Cacibの側では、不正な取引を意図的に斡旋していた事実はないことが捜査において証明されたとコメント。PNFの側では、Cacibが捜査に協力したことを評価し、罰金額を減額したと説明している。
2013年から2021年にかけて、Cacibは2500件の「CumCum」型取引を手配し、5000万ユーロの利益を得ていたという。罰金額はこの利益額を踏まえて決定された。この事件において処分が決まるのはフランスではこれが初めてだが、脱税により仏国庫が被った被害は45億ユーロに上るともみられており、PNFは、Cacib以外に、BNPパリバとその子会社のエクサーヌ、ソシエテジェネラル、ナティクシス(BPCE銀行傘下)、HSBCを捜査の対象としている。Cacibへの制裁の確定は、捜査対象の各行に対する圧力を強める材料ともなる。