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パリ8区から住民流出

日刊紙ルモンドは9月16日付で、パリ8区で住民が減っていると報じた。ジェントリフィケーションの実態や、怪しげな不動産投資の実情などを紹介している。

8区は右岸に位置し、南限がセーヌ川、北限がサンラザール駅界隈で、西端が凱旋門、東端にはコンコルド広場やマドレーヌ広場があり、シャンゼリゼやオスマン大通りが東西に走っている。南側にモンテーニュ通りで区切られた三角形の地区は「黄金の三角形」と呼ばれ、高級ブティックが集中している。

8区の住民減少は以前からの傾向で、過去50年間では実に半分近くに減少した。商業活動が生活者を押しのけたことが一つだが、近年では、高級物件化を経て、外国人の富裕者が別荘として購入するケースが多く、地代は吊り上がり、ほとんどの期間、誰も住んでいない住宅が増えてゆく。モンテーニュ通りなどでは、流行りのルーフトップで1平方メートル6万ユーロという高級物件もある。ルモンド紙は、パリ五輪でアルマ橋の近くがいいと、600万ユーロ近くの物件をその場で買った米国の資産家のケースを紹介している。それとは別に、訳あり実業家の怪しい動きとして、ルモンド紙は、アドリアン・ラビ氏の「フォンシエールデュトリアングルドール」社について報道、同社の名前が掲げてある物件は2024年年頭時点で15建物以上を数えていたが、入居者や店舗がほとんどないまま放置されている。資金源も不明で、リビアのカダフィ政権の隠し資産ではないかという噂もある。ラビ氏は税務当局との係争なども抱えており、怪しい状況が続いている。

高級物件が多いのとは裏腹に、実際の居住者の生活条件はむしろ悪い。8区では、シャワー等がない住宅が全体の9%を占めており、これはパリ平均の7%より高い。最上階の小さな設備の悪い部屋が多く貸し出されていることに由来し、トイレが共同というところも少なくない。8区では、一等地のジョルジュサンク通りに23戸の社会住宅を整備する工事を開始したが、こうした整備を無駄遣いだと考える向きもあり、理解は必ずしも得られていない。

KSM News and Research