パリ地裁は9月25日、リビア不正資金事件で被告人のサルコジ元大統領に厳しい有罪判決を言い渡した。特に、逮捕状を発行し、未決勾留を開始する旨を決定した。大統領経験者の収監は初となる。サルコジ元大統領は判決後に、無実を改めて主張して控訴すると予告。勾留開始を決める判決を、法治国家への重大な侵害だなどと強く批判した。
この裁判では、サルコジ氏が当選した2007年の大統領選挙に向けて、サルコジ氏の陣営がリビアのカダフィ体制(当時)から不正に資金を得ていた疑いが追及された。サルコジ氏の側近であるゲアン(後に大統領府長官や内相など歴任)とオルトフー(後に内相を務める)の両被告人が、カダフィ体制の要人であるアブダラ・セヌシ氏と会談しており、裁判所は、リビア資金を得ようとする動きがサルコジ氏の陣営にあったのは明らかだと認定。元大統領は、収賄、公金横領秘匿、選挙資金規正法違反、犯罪共謀の罪状で禁固7年の求刑を受けていたが、裁判所は、うち前3項目の罪状については証拠不十分により無罪とし、最後の罪状で禁固5年という厳しい有罪判決を下した。裁判所は、元大統領が、部下に不正資金集めを委ね、自らの名前で行動することを認めていたとし、国民の信頼を損なう重大な違法行為に責任があると認定した。判決確定を待たずに未決勾留を行うことを決めたほか、10万ユーロの罰金刑と、被選挙権を含む5年間の市民権停止も命じた。元大統領は、10月13日に刑罰担当の裁判官により呼び出しを受け、収監開始の日程と収監場所を通告されることになる。
元大統領と共に起訴されたゲアン被告人は、収賄及び文書偽造の罪で、禁固6年と25万ユーロの罰金刑を言い渡された。健康状態を理由に、未決勾留の実施は免除された。ゲアン被告人は金銭を受け取ったことで処罰されたが、裁判所は、金銭が実際にサルコジ大統領の選挙活動に充当されたとは断定できないと認めている。オルトフー被告人は、元大統領と同じ「犯罪共謀」の罪状にて、禁固2年の有罪判決を言い渡された。判決は暫定的に執行されるが、収監はなく、位置確認の発信機装着による自由刑が適用される。このほか、リビア側との仲介役を務めた実業家のジウリ被告人は、禁固6年・罰金300万ユーロの有罪判決を受けた。他方、事件当時にサルコジ陣営の選挙キャンペーンを指揮したブルト被告人(現下院議員)は無罪判決を得た。
サルコジ元大統領は、資金の流れに関する明確な証拠がないことを特に強調し、無実だと主張し続けている。なお、元大統領は、汚職容疑(捜査情報の融通と引き換えに司法官に厚遇を約束した事件、通称「電話盗聴事件」)では禁固1年の有罪判決が最高裁で確定している。2012年の大統領選挙における選挙キャンペーンの不正会計事件(通称「ビグマリオン事件」)では、控訴審で禁固1年の有罪判決を受け、現在上告中。