ルコルニュ首相は10月3日朝、予算法案の採択において「49.3」を発動しないと発表した。首相府前で声明を読み上げた。就任以来で公式声明を発表するのはこれが初めてで、野党側に重要な譲歩を示した格好になった。
「49.3」は、憲法上の条文の番号によりこの名で呼ばれている。法案の国会審議において、政府が49.3の発動を宣言すると、審議は終了して採決を経ずに法案は採択される。ただし、内閣不信任案が提出され、採択されると、法案の採択は白紙に戻される。マクロン政権は、下院で過半数を失って以来、予算法案を常に「49.3」を利用して採択しており、これを自ら放棄するのは、厳しい状況にある国会運営をさらに厳しくすることにもなる。
ルコルニュ首相は「49.3」について、本来は、与党勢力内に反対論がある案件について、内閣が信を問うことで可決を迫るための手段だったと指摘。与党が過半数を持たない現状では、その使用は本来の目的から逸脱すると述べた上で、下院が分裂した状況にある中で、議会が政策協議の中心にあると認めて、話し合いと歩み寄りを促すためにも、「49.3」は使用しないことを政府として約束すると説明した。
「49.3」の不使用は、社会党が要求していたものであり、社会党は首相の発表を歓迎した。ルコルニュ首相は、富裕者課税導入の代案を示して社会党の協力を取り付けることを望んでいるが、「49.3」の不使用により社会党を懐柔できるかどうかはまだ分からない。首相は3日には、極右政党RNの代表らとも会談したが、RNの側では、「49.3」の不使用を評価しつつも、今後の方針については、7日に予定される首相の施政方針演説を聞いた上で決定すると説明している。