欧州連合(EU)が2035年に予定する域内新車販売のゼロエミッション化(エンジン車の新車販売禁止)を巡り加盟国間で対立が生じている。バッテリー電気自動車(BEV、フルEV)の需要が伸び悩む中、欧州自動車工業会(ACEA)や域内最大の自動車生産国ドイツなどは規制を緩めて、例えば2035年以降もプラグインハイブリッド車(PHEV)などの半電気自動車の販売継続を許容することなどを要求している。これに対して、やはり域内の主要自動車生産国であるフランスとスペインは10月21日のEU環境相理事会の機会に、2035年の新車完全ゼロエミッション化を支持する立場を共同発表した。両国は、規制の一定の柔軟化には賛同した上で、2035年を期限とする完全ゼロエミッション化は自動車部門にとり重要なメルクマールであり、EV用バッテリーの域内大量生産などの産業プロジェクトを継続するための必要条件でもあって、変更するべきではないと主張している。
EUは2035年をめどとする新車ゼロエミッション化の原則を2022年に採択したが、2026年に必要に応じた軌道修正を行うことを決めている。自動車業界からの強い要望に応じて、欧州委員会は今秋から協議を開始することを受け入れ、加盟国はそれぞれの立場を表明しつつある。
主要産業である自動車部門が深刻な危機に直面しているドイツでは、メルツ首相が2035年のエンジン車新車販売禁止を回避するために全力を尽くすと言明している。フランスとスペインは原則の堅持を支持し、ドイツと反対の立場を表明したが、これには意外感もある。フランスでは大手メーカーのルノー・グループとステランティスが独同業と同じく2035年の新車完全ゼロエミッション化は非現実的だとして、見直しを求めており、政府も両社の主張に理解を示して、規制の柔軟化を検討するとしていた。