パリのノートルダム寺院をあしらった記念の2ユーロ硬貨の流通がこの10月末に始まった。2000万枚が段階的に市中に供給される。
記念硬貨には、2019年の火災を経て再建が成就し、2024年末に再オープンが実現したノートルダム寺院があしらわれている。正面から見た鐘楼を含む壁面を前面に、後景には尖塔を配した図案で、背景にはバラ窓を模したデザインが付されている。右側に縦に「ノートルダム・ド・パリ」の文字が刻まれ、左側にはRF(フランス共和国)と年号(2025)、そして、鋳造局(モネドパリ)のエンブレムである「豊穣の角」と、鋳造工場(この場合には、ジロンド県ペサック工場)の刻印が小さく記されている(ちなみに、この最後の2つはフランスで鋳造のすべての2ユーロ硬貨に刻印されている)。
フランスでは、古くなった硬貨を回収し、置き換えるために、2ユーロ硬貨に限っても毎年5000万-6000万枚の新硬貨が市中に供給されている。このうちの2000万枚が、今年はこのノートルダム硬貨ということになる。その量からみて、希少価値が生じることは考えられない。なお、ユーロ硬貨は、数字のある面は全加盟国共通だが、もう一方の面は各国がデザインを決めて鋳造する権限がある。恒常的なデザインの硬貨は15年期限で定められる(君主制を建前とする国の場合は、元首が代わるたびに変更可能)が、このほかに、各国はそれぞれ年間に2種の記念2ユーロ硬貨を発行することができる。ノートルダム硬貨は2025年分として用意された。記念硬貨のデザインの決定に当たっては、欧州委員会による承認を経る必要があり、過去には修正を要したケース(ベルギーによるワーテルローの戦い記念硬貨など)もある。