政府機関の戦略企画高等代表事務所は10月28日、人口動勢が雇用市場に及ぼす影響に関する報告書を公表した。報告書は、高等代表事務所の依頼により、労働相官房長を務めた経験があるアントワーヌ・フーシェ氏(コンサル会社のキャビネ・カンテを主宰)が作成した。
INSEE予測によると、フランスの労働力人口は2033-35年を境に減少に転じる(2023年の年金改革の影響を考慮後)。近年の出生率の低下の影響が遅れて浸透する形になる。報告書によると、この状況において年金会計の収支均衡を目指すとしたら、年金拠出期間を、2027年時点の43年間に対して、2045年までに46年間へと引き上げる必要がある。この引き上げに伴い、退職年齢は、同じ期間に62-63歳から70-71歳へ上昇する。なお、この試算においては、年金保険料の引き上げと年金支給額の見直しのいずれも調整手段として用いないことが前提となっている。報告書は、年金保険料が過去40年間で2倍に増えており、これ以上の引き上げは妥当ではないと指摘している。 報告書はまた、労働力人口が縮小する結果、雇用市場は売り手市場に傾き、企業の採用難が恒常化すると予想。高失業社会からの脱却が実現し、企業における従業員と経営側の力関係も逆転するとの予測も示した。移民が労働力人口に及ぼす効果については、過去5年の実績では、年金拠出期間を1.5-2ヵ月分引き上げたのと同じ貢献をもたらしたと分析。例えば、向こう6-8年に渡り移民受け入れを現状のペースで続けたとすると、退職年齢を1年間引き上げるのと同じ効果が年金収支にもたらされる。これは、逆に同じ期間に「移民ゼロ」とした場合には、退職年齢を1年間引き上げなければならなくなることを意味する。