下院における予算諸法案の審議が10月31日で1週目を終えた。予定していた1週間では審議は終わらず、大幅な修正が相次いで加えられた。ルコルニュ内閣が不信任案で転覆されることなく、予算諸法案を採択させることができるかどうか、まだ展望は開けていない。
下院は、社会党が要求してきた「ズックマン課税」の導入の修正案を不採択とした。富裕者の保有資産に照らして最小限の課税を導入するという趣旨で、対象資産の範囲を違えて税率を2%又は3%とする2案が提出されたが、いずれも不採択となった。これに社会党が不満を強めて内閣不信任に転じる恐れもあるため、ルコルニュ首相は、年金と各種生活保護手当の支給額改定凍結(インフレ率考慮後で実質目減り)を定めた条項の削除に応じると発表。ルコルニュ首相は、11月2日付の日刊紙ルパリジャンに対して、社会党が下院審議の過程で多数の譲歩を引き出したことを強調し、ズックマン課税の不採用にばかり目を向けずに、自らの成果を国民にアピールすることを考えるべきだとの考えを示した。これと関連して、10月31日の下院審議においては、「非生産的資産への課税」の導入条項が採択された。これは、かつて廃止されたISF(連帯富裕税)の名前を変えた復活とも目されている。資産課税としては、不動産資産を課税標準とするIFI(純価値130万ユーロ以上の資産が対象)がまだ残っているが、職業的な資産を除く「非生産的資産」を課税標準とし、純価値130万ユーロ以上の資産を対象に、1%の一律税率にて新税を導入するという趣旨。 それと並行して、下院審議においては一連の法人課税の強化案が採択されている。多国籍企業がフランスで達成した利益を対象に25%を課税する新税の導入、インターネット大手企業を対象とする通称「GAFAM税」の税率引き上げ(3%から6%へ)、大手企業を対象とする特別課税の継続などが採択された。