スイスの時計業界団体によると、10月の時計輸出額は22億スイスフラン(23億ユーロ)となり、前年同月比で4.4%減少した。特に最大の輸出先である米国向けの輸出額は46.8%減と大きく落ち込んだ。これは8月に米国のトランプ政権がスイスに対して39%の相互関税を発動したことが原因。その影響は顕著で、スイスの対米時計輸出額は8月に23.9%減、9月に55.6%減を記録していた。10月も大幅減が続いたが、スイス政府は先ごろ、相互関税率の15%への引き下げで米国と合意しており、時計業界はこれに安堵して、クリスマス期の挽回に期待している。
なお、相互関税の発動以前には、メーカーがこれを見越して米国での在庫を積み上げたため、対米輸出は大幅増加を記録していた(4月に149.2%増、7月に45%増など)。そのため、1-10月期の対米輸出は前年同期比3.7%増とむしろ微増を記録した。ただし、ルイエラールのように生産量が小さいメーカーの場合は在庫の構築もできず、関税の打撃をあらかじめ緩和することもできなかったという。
スイス時計産業にとり、トランプ関税とならぶ懸念材料は中国の高級品消費の落ち込みだが、対中輸出額は9月に続いて10月にも回復し(12.6%増)、これも安堵の材料となった。
米中以外の10月の動向は、香港(2.4%増)、シンガポール(6.6%増)、アラブ首長国連邦(39.8%増)、フランス(10.8%増)、ドイツ(3.9%増)などへの輸出が好調だった一方、日本(5.6%減)や英国(7.4%減)への輸出は後退した。