報道によると、仏ダンケルク・アルミニウムを保有する米ファンドのAIPが同社の売却を検討している。
ダンケルク・アルミニウムは1991年に発足。当時の仏アルミ大手ペシネーが大規模な新鋭工場として設立した。年間30万トンの一次アルミニウムの生産能力を持ち、年商は8億ユーロ、750人が勤務している。
ペシネーは企業買収に飲み込まれる形で最終的にリオティントに吸収された。フランス資産の多くは分離売却の対象となり、容器製造事業はアルベア、アルミプロファイル事業はコンステリウムとして独立している。アルミ工場は、サンジャンドモーリエンヌ工場が2013年に独トリメト社の傘下に入り、ダンケルク工場は2018年に英GFGの傘下に入った。ただ、GFGはその後、経営難に陥り、ダンケルク工場の所有権は2021年になって、GFGの債権者だった米AIPに移った。
その後の時期は、新型コロナウイルス禍や、ロシアのウクライナ侵攻に由来するエネルギー価格高騰でアルミニウム・ダンケルクにとって厳しい時期となったが、AIPは減産による損失回避など、経営改善に手を尽くして困難を乗り越えた。2023年半ばには生産も回復に向かい、二次アルミニウム生産を目的とする電気炉導入で1300万ユーロを投資し、同年間生産能力2万トンを達成した。アルミ産業は電力の大口消費家であり、ダンケルクに工場を開いたのも、原料のボーキサイト搬入に適した港湾施設に加えて、近隣のグラブリーヌ原子力発電所からの電力調達という地の利があったからだが、原子力発電所を運営のEDF(仏電力)との間では、向こう10年を対象とする長期契約を先頃結んで電力の安定供給を確保した。