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RATPの2038年問題でアルストムに改善命令

2038年問題が原因で、パリ首都圏でRATPが運行する路線の3分の1以上が2038年1月19日以降に運行できなくなる恐れがある。2038年問題とは、32ビット整数型のプログラムが同日以降の日付を認識できなくなるというもので、アルストム製車両(MI09、MP05、MF01、MP89、MP14、TW03、TW07、TW09、TW10)に搭載されていた複数のソフトウェアがこの問題に非対応となっている可能性がある。RATPの訴えを受けて、パリ行政裁判所が11月13日、アルストムに非があるとして改善を命じていたことがこのほど報じられた。

この問題は、2017年10月にRATP職員がシステム点検時に2038年以降の日付を入力しようとしてできなかったことから発覚した。その後の調査で、当初問題が指摘されたRER(郊外連絡急行)A線向けのMI09型車両以外で、地下鉄(1、2、4、5、9、11、14号線)とトラム(T3、T5、T6、T7、T8)で用いられている車両にも同様の問題があることが判明した。2018年から2019年にかけて何度も協議が行われたものの、問題解決に向けた合意には至らず、RATPは2019年10月に提訴した。

アルストム側では、RATPが32ビット整数型で作成されることの多いオープンソース型プログラムを推奨していたことを強調し、2038年問題についてはRATPも承知していたはずだと主張した。しかし、裁判所は、RATPにはパリ首都圏の鉄道運行に関して責任があるだけで、車両製造業者であるアルストム・トランスポールと同様の技術的能力は持ち合わせていないと指摘。契約書には車両が30年から40年は利用されることが明記されており、2011年12月から2017年4月の期間中に納入されたMI09型車両140台は契約上の運用期間中に2038年を迎えることになることから、ソフトウェアの問題を「隠れた瑕疵」に当たると判断した。アルストムは5年以内に問題を解決するよう命じられ、裁判所の定めたロードマップに遅れが生じた場合には月10万ユーロ、5年以内に問題解決に至らなかった場合には月100万ユーロの違約金を支払うことになる。アルストムはこの決定を不服として控訴する構え。

KSM News and Research