マクロン大統領は7月13日、翌日の革命記念日の軍事パレードを前に演説し、国防の強化に尽力する姿勢を明確に打ち出した。
大統領はこの機会に、世界における脅威が高まっていることを踏まえて、国民と企業に努力を呼びかけた。大統領は、主にロシアの脅威を念頭に置いて、第二次大戦終了以来で、我々の自由がこれほど脅かされたことはないとし、自由を守るためには、他から恐れられ、強力になることが必要だと説明。大統領はこれに関連して、自らが就任した2017年比で国防予算を2倍増にするという目標を、従来の2030年ではなく、自らの2期目の任期が満了する2027年に達成する(年間予算640億ユーロ、ちなみに2025年の同予算は505億ユーロ)と予告。予算増の使途としては、足元で欠けているリソースの増強を優先するとして、弾薬の備蓄増強、大型ドローン、防空ミサイル(SAMP/T等)、衛星網の整備と、兵員の訓練を挙げた。予備役の増強や、市民対象の新たな役務制度の導入の是非等については、夏休み明けに発表がなされる。大統領は、企業に対しては、国家だけで軍備の増強は図れないとして、より安価に、またより迅速に生産する体制を整えることで協力してほしいと訴えた。
これより前、ビュルカール全軍総司令官は11日に、マクロン大統領の指示を受けて、記者会見を開いて脅威の現状に関する報告を行った。総司令官は、脅威が全方位に遍在していると指摘。ロシアにとどまらず、中東紛争やインド太平洋における緊張、テロの脅威、宇宙空間やサイバー空間等における対立などを挙げ、気候変動がカオス的状況をもたらす要因になる恐れも指摘した。ロシアについては、ハイブリッド戦により欧州、特にフランスが標的になっていると指摘。ロシアが独裁的な軍事強国であることを強調しつつ、ロシアの狙いは北大西洋条約機構(NATO)の解体と欧州の弱体化にあり、2030年頃には、「フランスの国境に対する真の脅威になる」との見方を示した。