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仏政府、年金改革法案の採択を強行

年金改革法案の最終的な採決が16日に行われた。法案は上院を通過後、午後の下院採決において、政府がいわゆる「49.3」を発動したことにより、採決を経ずに採択された。
「49.3」とは、憲法の第49条3項が定める措置で、政府はこの措置の発動を宣言することにより、法案を採決せずに採択させることができる。ただし、その後に内閣不信任案が可決されれば、法案採択は白紙に戻される。連立与党は下院で過半数を失っており、法案を採択させるには、保守野党「共和党」の協力が必要だったが、共和党内には年金改革案に反対する勢力があり、過半数を確保するには足りなかった。政府は最後まで共和党議員の説得に尽力したが、叶わないとみて最終的に「49.3」の発動を選択した。
野党勢力からは今後、複数の内閣不信任案が提出される見通し。その行方がどうなるかは見極める必要があるが、共和党の協力を得た国会運営の確立を存続基盤としてボルヌ内閣が発足したことを考えると、今回の採決の失敗で、ボルヌ首相の責任が問われる事態となることも考えられる。ただし、マクロン大統領は、ボルヌ首相を温存し、内閣改造でこの場をしのぐ考えとする報道もある。他方、共和党は、投票が見送られたおかげで、内部対立が投票結果という形で白日の下にさらされることは避けられたが、足並みの乱れは隠しようもなく、今後の政局運営においてどのように存在を示してゆくべきなのか、当の本人らが決めかねているような印象がある。左派勢力は「49.3」の発動を自らの手柄と捉えており、内閣不信任案の提出に加えて、RIPと呼ばれる市民発議の国民投票請求で年金改革法を廃案に導くことも検討している。
労組側は16日中に会合を開き、次回の抗議行動を23日(木)に行うことを決めた。18・19日の週末にも地域単位で抗議行動を呼びかける。労組側は、「49.3」の発動により、抗議行動への参加に弾みがつくと期待している。世論調査では、年金改革への反対が多数派を占めており、抗議行動への支持の念も広く表明されているが、同時に、法案の採択は不可避との見方が強く、抗議行動への参加は無駄と考える人も多い。労組側は、政府が強行手段を選んだことで、国民の不満が高まるものと期待している。なお、16日午後から夜にかけては暴力的な衝突も発生。パリのコンコルド広場周辺では路上での放火などの被害があり、217人の逮捕者が出た。一部の地方都市でも同様の衝突が発生した。

KSM News and Research