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モーリス・ラベルの病気の真相に迫る新刊本

20世紀フランスを代表する作曲家モーリス・ラベル(1875-1937)が晩年にかかった病気について考察する新刊書「ラベルの脳」(オディル・ジャコブ社)がこのほど刊行された。限局的脳萎縮症という診断を下した。
脳科学分野の専門家であるルシュバリエ、メルシエ、ブラデルの3氏が共同で執筆した。ラベルは1930年代に入り、原因不明の病気になり、それ以来、1937年に死去するまで作品を発表していない。3氏は、ラベルが残した書簡において段階的に明確になってゆく病状の進行などを分析した上で、限局的脳萎縮症のため、思考や楽想を言葉や記号として表現する能力を失っていったものと推定している。これは、晩年のラベルの頭脳の中に、我々が決して聞くことができなかった音楽が閉じ込められていたことを意味している。また、ミニマリズムの先駆のような傑作「ボレロ」(1928年)が、狂気の兆候などではなかったことも意味している。
ラベルは神経学者のテオフィル・アラジョアニヌの診察を受け、失語症など脳神経学的な疾患とする診断を得ていた。この診断は、3氏による鑑定結果とも一致する。診察においてラベルは、自作の演奏の小さな誤りなどを逐一指摘することができたが、メロディを口述することなどは一切できなかった。ラベルは1937年、脳腫瘍の疑いで脳外科医クロビス・バンサンの執刀による手術を受けたが、腫瘍は発見されず、その数日後に死亡した。

KSM News and Research