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ミシェル欧州理事会議長、EU拡大の展望を提示

欧州理事会のミシェル議長は8月28日、スロベニア政府主催の恒例の国際会議「ブレッド戦略フォーラム」で講演し、欧州連合(EU)は次の戦略アジェンダを準備するにあたって、拡大に関する明確な目標を定める必要があり、2030年までに新規加盟国を迎え入れる用意を整えなければならないとの見解を披露した。
現時点でEUの加盟候補国と認定されているのは、西バルカン諸国(アルバニア、ボスニア、北マケドニア、モンテネグロ、セルビア)とウクライナおよびモルドバで、このうち、ウクライナとモルドバは2022年にロシアがウクライナに侵攻した直後の6月に加盟候補国の地位を獲得したという事情がある。EUは今後の欧州理事会会合(EU首脳会議)で拡大問題を協議するが、ウクライナおよびモルドバとの加盟交渉を開始するかどうかが焦点の1つとなる。欧州委員会は秋にこの問題に関する提案を行う予定。西バルカンの5ヵ国はすでに加盟交渉に着手しているが、10年以上も前から交渉している国もあって、待ち時間の長さにしびれを切らし始めている。
ミシェル議長はこれらの候補国の加盟受け入れについて、野心的だが必要だと積極的な姿勢を示した。フォーラムに出席していたアルバニアのラマ首相は、議長の発表を歓迎しつつ、近いうちに加盟への前進として具体化することを望むと発言。後発のウクライナの加盟は欧州の和平という見地から「当然」と理解を示した上で、それが西バルカン諸国の加盟を遅らせることになってはならないと釘をさした。またセルビアのブルナビッチ首相は、自国をはじめとする西バルカン諸国が地理的、文化的、経済的に欧州に所属する国々であることを強調しつつ、加盟までの待ち時間の長さに不満を表明、加盟がなかなか認められないために国内で欧州懐疑主義が強まったことを指摘した。
ミシェル議長も拡大の遅さが、候補国でも、EU内でも、大きな失望感を招いていると認めた。その上で、EUの新たな「段階的統合」のアプローチにより、加盟候補国が、全ての条件を満たす前でも、防衛や安全保障に関するEUの政策に部分的に参加する可能性が開かれると示唆した。
なお、トルコもEU加盟候補国だが、加盟交渉は2018年に凍結されたままとなっている。

KSM News and Research