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出生数、戦後最低の水準まで低下へ

INSEE速報によると、8月の出生数は1日当たりで1896人となり、前年同月比で8%減少した。1-8月期では、出生数は前年同期比で7.2%の減少を記録。この調子だと、2023年通年の出生数は70万人を割り込む見通しで、戦後で最低の水準まで低下する。なお、前年の2022年にも、出生数は前年比2.2%減の72万6000人まで後退していた。
出生数は、ピークとなった1971年に比べると20.8%の減少を記録。フランスは2010年代には、近隣諸国と比べて高めの出生数を維持していたが、その時期と比べても12.8%の後退となる。出産可能年齢の女性の数には大きな変動はなく、出生数の減少は出生率の低下に直結している。合計特殊出生率(女性が生涯に出産する子どもの数で示す)は、2022年には1.80まで低下。10年前には、人口の維持に必要な2に近い水準にあったが、急激に低下している。2022年には、25-34才の女性で出産の減少が目立ち、逆に、40才以上の女性による出産のみが増えている。産婦の平均年齢は31.2才まで上昇した(1970年代の半ばには26才、2012年には30才)。出産の高齢化は出生数の低下と同期している。
出生数が低下している原因を特定するのは困難だが、保守系日刊紙ルフィガロは、カトリック家族協会(AFC)の依頼で行われたアンケート調査(2023年7月実施)の内容を紹介している。それによると、50才未満の女性の38%が出産を諦めた(2子目以降を含む)と回答。その理由として最も多く上がったのが、託児の困難(出産を諦めた人のうち47%)であり、これに、「財政上又は雇用上の困難」(44%)が続いた。私生活と仕事の両立の困難が出産を思いとどまる動機として最も重要であることがわかる。半面、気候変動の将来を悲観して、また、気候変動に貢献しないようにする目的で子どもを持たないという選択をする人はさほど多くなく、理由としては5番目に過ぎなかった。他方、育児休暇取得の条件が改善されれば、出産を諦めるという選択を見直すかもしれないと回答した人はほぼ半数(48%)に上っている。政府もこの対策に乗り出す可能性を示唆している。

KSM News and Research