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パレスチナ・イスラエル情勢を受けて仏国内でも混乱に懸念

パレスチナ・ガザ地区のハマスによるイスラエル攻撃開始を受けて、仏政府は紛争が国内に飛び火することを警戒している。治安当局は1万人の警察官・憲兵隊員を動員し、ユダヤ人学校やユダヤ教会などの施設の警備を強化。ダルマナン内相とアタル教育相は11日にはユダヤ人学校を訪問して、治安確保に向けた決意を確認する。内相はまた、インターネット上の脅迫的な言動なども含めて、監視の目を光らせる姿勢を強調している。
フランスでは、ユダヤ人コミュニティとアラブ系コミュニティのいずれも規模が大きく、国内に対立が持ち込まれる恐れがある。ボルヌ首相は10日に下院で行った演説の中で、ガザ地区への人道援助について、テロ組織にフランスの援助が1ユーロたりとも渡らないようにするための検査体制を強化すると言明。監視を強めつつ、人道援助は継続する考えを確認した。イスラエル軍によるガザ地区の封鎖と攻撃が長期化すれば、住民らの悲惨な状況を伝える動画が拡散するなどして、国内でも対立が一段と先鋭化するリスクがあり、政府として、人道援助に尽力してパレスチナに配慮しつつ、イスラエルを支持するというバランスのある対応を進めることを目指している。
今回の紛争を巡っては、左翼政党「不服従のフランス(LFI)」のみが、ハマスとその攻撃について「テロ」という言葉で形容するのを拒否しており、浮き上がった存在になっている。ボルヌ首相は10日の演説で、ハマスをテロ集団と呼び、ハマスによる攻撃をテロ攻撃として糾弾した上で、インフレ亢進などでフランス社会が既に厳しい状況にある中で、各勢力に責任ある対応を呼びかけており、名指しは避けたが、LFIを念頭に置いた発言と考えられる。LFIを主軸とする左派連合NUPES内にもLFI批判が広がっており、社会党は10日、NUPES枠内の予算法案関連の対応協議から撤退することを決め、LFIに対して距離を置く姿勢を示した。ただし、今のところ、NUPESの解消にまで至る展開にはなっていない。

KSM News and Research