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コロナ危機時の保護マスク、仏メーカーが存続の危機に

2020年から21年にかけて新型コロナ危機が猛威を振るったおり、フランス国内で保護マスクを生産する設備・技術がないことが判明して大きな問題となり、Lemoine社など関連企業が公的支援を得て急遽生産拠点を立ち上げ、特にフィルター製造など必要な技術を確保して生産態勢を整えた。ところが、危機が沈静化すると同時に需要が減退、かつ、中国を中心とする外国メーカーの競争力が圧倒的に強く、コロナ危機時に創業した国内マスクメーカーの半分はすでに閉鎖し、残る会社も事実上生産を停止しているところが多い(直接・間接の1万雇用のうち、残存しているのは15-20%)。業界団体F2Mでは、これらフランスのマスク製造企業が消滅するのは時間の問題で、せっかく獲得したフィルター関連などのノウハウも失われてしまうと警告している。
中国産マスクが1枚当たり2.5ユーロセントであるのに対して、仏製マスクは4-5セントと値段が高く、民間だけでなく公的発注者も入札で安い中国産マスクを発注する傾向が強い(例えば仏軍が中国産マスクを発注)。また、一部の公立病院では、製品の環境インパクト評価についても中国産マスクに高評価を付けている場合があり、業界側では、行政裁判の可能性を示唆して病院側に圧力をかけることを余儀なくされる場合もあるという。業界ではさらに、コロナ期の特別措置として導入されたVAT(付加価値税)の割引税率5.5%が撤廃されることを懸念しているが、いずれにしても、価格だけに焦点を当てるのならメイドインフランスの再興はありえないと指摘している。

KSM News and Research