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欧州人権裁、気候変動対策不備でスイス政府の責任を認定

欧州人権裁判所は9日、気候変動対策が不十分であることを理由に、国を相手取って市民が起こした3件の訴訟について判決を下した。うち1件について、スイス政府の責任を認める判決を下した。

欧州人権裁判所は、欧州人権条約の運営機関である欧州評議会の下に置かれた司法機関で、仏ストラスブールに本部を置く。今回の提訴は、スイスの年金生活者連合、ポルトガルの若者グループ、仏グランサント市のカレーム元市長(2001-2019年在任)がそれぞれ起こしたもので、気候変動対策の不備の責任を国に追及している。裁判所は、カレーム氏が2023年3月に仏政府を相手取って起こした訴訟については、2019年から欧州議会議員を務める同氏が現在はグランサント市に居住しておらず、訴人としての資格がないことを理由に却下した。また、ポルトガルの若者グループが、ポルトガルを含む32ヵ国を相手取り、ポルトガルで発生の大規模な山火事などの被害は各国が正しく気候変動対策を進めなかった結果として発生したと主張して訴えていた件については、グループが本国ポルトガルで可能な訴訟の手段をすべて尽くしていないことを理由に、やはり却下した。

裁判所は、スイスの年金生活者らが起こした訴訟についてのみ、スイス国内での訴訟を経ての提訴である点を認めた上で、スイス政府が、炭素予算等の方法を用いて温室効果ガスの排出量を数量的に制限する手段を十分に講じていないとし、これが欧州人権条約の第8条(生存、健康、福祉、生活の質を保障される権利について定める)の違反に相当すると認定した。汚染や自然災害等の環境問題で第8条違反が認定された判例はあるが、気候変動対策の不備が8条違反として認められたのはこれが初めてで、画期的な判例となる。スイスの最大与党であるスイス国民党はこの判決に強く反発しており、欧州評議会からの脱退を要求した。

KSM News and Research