欧州委員会の最新の試算で、イタリアの1人当たりGDPがフランスと同額になった。2020-25年のデータに基づく。
イタリアは2025年に、1人当たりGDP(購買力平価)でフランスに追いつき、ドイツとの差を2020年の24.3%から13.9%に縮めた。ユーロ圏平均との差も、2020年の10.7%から5.9%となった。
しかし、エコノミストのサラ氏は「一見良好な数字の奥に、イタリアの抱える構造的問題が潜んでいる」と指摘する。同国の雇用市場では、2022年以降84万7000人(うち67万2000人が正規従業員)の雇用が創出され、労働力人口の就業率は過去最高の62.3%に達した。しかし国民の老齢化が進み、2020-25年の期間に人口が70万7000人減少して、ついに6000万人の大台を割ってしまった。イタリア統計局(Istat)による同国の2000-19年の平均成長率は0.38%。1人当たりGDPの増加は、割る数(人口)の減少によっており、経済成長の成果ではないと分析される。2000年以来で、工業生産は20%後退し、1時間当たりの労働生産性は1.3%しか伸びていない。同じ期間にフランスは15%、ドイツとスペインは20%も労働生産性を向上させた。この差は、長くイタリアの経済成長を担ってきたのが、観光・小売といった労働集約型で技術革新の乏しい産業部門だったことで説明される。イタリア銀行(中銀)も、特にウクライナ戦争以後、技術革新への投資を怠ってきた企業の責任を指摘している。