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食品のカドミウム汚染、フランスで高い水準に

開業医医師会は6月2日付で首相や関係閣僚らに書簡を送り、食品のカドミウム汚染について強い懸念を表明した。カドミウム汚染に由来するすい臓がんなどの疾病が増えていることを指摘。特に子どもへの被害に懸念を示し、対策を求めた。 重金属のカドミウムの食品汚染は、鉱物系リン酸塩肥料に含まれるカドミウムに由来すると考えられる。フランスでは、60歳の非喫煙者(カドミウムは体内に徐々に蓄積されてゆくため、この年齢で基準値が定められている)について尿中のカドミウム濃度(クレアチニン補正値)を1グラム当たり0.5マイクログラム以下とする基準値を定めているが、2014-16年の調査結果では平均で0.57マイクログラムと基準を上回っている。6-10歳の子どもにおいて、10-18歳と比べて濃度が高い(前者は0.31マイクログラム、後者は0.29マイクログラム)ことも判明している。子どもが食べることが多いシリアル、ジャガイモ、離乳食などに多いホウレンソウにおける含有量が大きいことが理由と考えられる。米国や他の欧州諸国と比べてフランスの汚染度は高く、6-10歳の尿中濃度は、米国(0.06マイクログラム)と比べても5倍も高い。フランスでは、リン酸塩肥料のカドミウム濃度が欧州平均と比べて1.76倍高く、これが人体の汚染の背景にあると考えられる。フランスで多く用いられているモロッコ産リン酸塩肥料でカドミウム濃度が高いことが一因ともみられており、リン酸塩肥料のカドミウム含有量の上限を段階的に引き下げる(2022年7月より1kg当たり60mg、2034年には20mg)ことを欧州連合(EU)は決定したが、土壌中のカドミウム濃度が低下に向かうには数十年がかかるとみられ、十分な解決にはならない。

KSM News and Research