ドイツの首都ベルリンで6月16日、ナチスのポーランド人犠牲者の追悼モニュメントの除幕式が行われた。ベルリン州のウェーグナー首相(CDU)をはじめとして、ドイツとポーランドの両国の代表が列席した。
ヒトラーが1939年9月1日にポーランドへの侵攻を宣言した施設「クロルオーパー」の跡地にモニュメントは設置された。1939年から1945年にかけてのナチスのポーランド被害者を悼む旨の文言を記した石碑が暫定的に設置された。将来的にこの場所に正式のモニュメントを設置し、歴史の記録を次世代に伝えることを目的としたドイツ・ポーランド記念館を整備する計画。
戦後ドイツはナチスの犠牲者の認知とメモリアルに模範的に取り組むことを目指してきたが、ポーランドは長らくその死角におかれていた。ベルリンにモニュメントを整備する件は、強制収容所の経験者でもあるポーランドのバルトシェフスキ元外相(2015年没)により提唱されたが、実現が遅れてほぼ立ち消えとなっていた。市民団体の働きかけなどもあり、2020年10月にドイツ連邦議会が承認し、ようやく実現の運びとなった。
メルツ現首相(CDU)は、欧州政策を重視し、中でもポーランドとの関係改善を主眼に据えており、就任直後にモニュメント建設を早期に実現すると約束していた。ポーランドとドイツの間には補償問題もある。ポーランドの保守「法と正義(PiS)」党による前政権は、欧州とドイツに厳しい立場をとり、ドイツに補償要求を突き付けていた。ドイツ政府側は、補償問題は1953年にポーランド政府が補償を放棄したことにより解決済みとの立場を崩していない。親欧州派のトゥスク現内閣は補償要求を取り下げているが、ポーランド国内では、ドイツが補償に応じるべきだと考える人が多数派を占めている。メルツ首相がこの問題で踏み込んだ姿勢を示すことができれば、両国の関係改善は決定的になるとみる向きもある。