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「交通殺人」を刑法に追加、改正法案が最終的に可決

「交通殺人」という刑法上の概念を導入する法案が7月1日、上院にて最終的に可決された。

現行法令の下では、交通事故による死亡の責任は、「過失致死」として追及される。これについて、被害者の遺族などから、言葉が軽すぎるとして、「殺人」として罪に問うよう求める声が以前から上がっていた。特に、著名シェフのヤニック・アレノ氏は、2022年5月にパリ市内で、無免許運転など重大な交通違反ドライバーが引き起こした事故により息子を失って以来、熱心に法改正を求めて働きかけていた。それが最終的に実現した。

法案は、無免許運転、飲酒運転、薬物摂取運転、最高時速を30km以上上回るスピード違反、携帯電話やヘッドホン着用のながら運転、停車命令の拒否、暴走行為のうち一つ以上を伴う死亡事故について、ドライバーを「交通殺人」として起訴する旨を定めている。最高刑は、禁固7年及び罰金10万ユーロで、2件以上の違反が伴う場合には、禁固10年及び罰金15万ユーロが最高刑となる。ただし、最高刑の規定は現行法令下のものと変わりなく、改正されたのは罪名のみにとどまる。交通安全団体などは法案の可決を歓迎しているが、実際の抑止効果を疑問視する声も専門家などからは聞かれる。

これとは別に、高齢者ドライバーが、自転車で通行していた小学生に次々に衝突し、1人を死亡させた事件の裁判がこのほどラロシェル地裁で行われた。84歳の女性ドライバーが2024年6月に、左車線を逆走して7人に重傷を負わせ、1人が死亡した。被告人は健康障害により起きた事故だと主張。検察側は執行猶予付きの禁固4年を求刑。免許のはく奪(5年以内の再取得禁止)をあわせて請求した。判決は7月22日に言い渡される。フランスでは、運転免許に期限が設けられておらず、今回の事件を機会に、高齢ドライバーに対する定期健康診断の義務付けなどの措置が議論の対象となっている。

KSM News and Research