欧州連合(EU)とメルコスール(南米南部共同市場)の間の自由貿易協定の実現が遅れている。フランスなど一部の加盟国が修正を求めて抵抗している。
メルコスールは7月2日と3日の両日、ブエノスアイレスで半期ごと主催の首脳会議を開いたが、この際、ブラジルのルラ大統領は、ブラジルの議長国期間の終了までに、協定の調印を実現することができると考える、と述べて、年内調印の方針を再確認した。ただ、これに先立つ6月30日に、欧州委員会は、一部の加盟国の反発に配慮し、批准に向けた法律文書の公表を見送っており、協定調印の行方には暗雲が漂っている。
EUとメルコスールとの間の自由貿易協定は、EUからメルコスールへの自動車、機械、スピリッツ等の輸出拡大をもたらす内容となっているが、メルコスール側からは、食肉、砂糖、米、はちみつ、大豆などの輸出拡大が期待できる。これにEUの一部の農業部門は神経をとがらせており、そうした反発に敏感な加盟国が、修正を求めて強く働きかけている。フランス、ポーランド、オーストリア、ハンガリー、アイルランド、オランダなどが反対しており、欧州委として無視できない勢力が形成されている。逆に、推進派のドイツは早期の決着を要求している。欧州委は足元で米国との通商交渉を抱えており、メルコスールとの協定はひとまず先送りとなった。