バイルー首相は7月15日、2026年予算法案に盛り込む節減策について、その骨子を明らかにした。総額438億ユーロの節減を盛り込むと予告した。
具体的には、まず国の歳出を100億ユーロ削減する。国防予算を除くすべての支出項目において節減を探り、公務員数を3000人削減する。2027年以降は退職者の3分の1を補充しない形でスリム化を図る。特殊法人等は統廃合を経て合理化する。次に地方自治体にも53億ユーロの節減を求める。歳出の抑制と交付金の見直しを進める。社会保障会計では55億ユーロの節減を達成する。医薬品の自己負担年間上限額を、50ユーロから2倍の100ユーロへ引き上げる。慢性的な基礎疾患の取り扱い方も見直す。医療機関にも節減努力を求める。医療機器のリユースを進める。また、病欠の検査を強化し、傷病手当金の支給の適正化を図る。首相はまた、懸案だった「空白の年」を実行することを決定。年金を含む各種給付の支給額を凍結(インフレ並み改定を行わない)し、公務員のベースアップも凍結する。また、所得税課税最低限と税率区分額も凍結する。これらによる節減額は71億ユーロを予定する。首相はこれに加えて、「社会的正義と税制上の正義」を掲げて一連の措置を予告。これは、脱税対策、各種税制優遇措置の整理、年金受給者の必要経費10%控除の廃止(代わりに2000ユーロの定額式の一律控除を認める)、富裕層を対象とした拠出金の徴収、節税対策、小包への課税(ファーストファッション対策など目的)からなり、その節減予定額は99億ユーロに上る。首相はまた、富を創造するために「より多く働く」ことが、財政健全化にとって不可欠だと言明。そのために、2日分の祝日を廃止する方針を示した。42億ユーロ相当の公租公課収入が期待できるという。失業手当の制度改革を含めて、労働関係の節減総額は明示されていないが、全体の数字から逆算すると、60億ユーロの節減が見込まれていることになる。
バイルー首相は、債務増大のスパイラルに歯止めをかけることが最重要だと力説、全員が応分の努力をして、財政健全化を進めることが不可避だと強調した。
首相の構想に対する反応では、特に批判の声が高いのが休日2日分の廃止で、首相は、復活祭翌日の月曜日と5月8日(第2次世界大戦祝勝記念日)の廃止を一案として挙げたが、ほかの日でもよいと言明した。野党勢力と労組がこの廃止に強く反発している。バイルー内閣は下院で過半数を得ておらず、内閣不信任案により退陣に追い込まれるリスクもある。首相は、夏休み直前というタイミングで予告することで、夏の間に協議を進めて、反発も落ち着いたところで、駆け引きの余地を探る考えとみられる。