フランス情報メディアのET TOI(エトワ)

フランスと日本をつなぐ

1€=

新規登録

スマホ利用で注意力散漫、経済への悪影響は既にGDPの0.6%

経済省は9月4日に、デジタル機器の普及に伴う経済へのマイナス効果に関する推計を発表した。現状でも年間の経済成長率を0.6ポイント押し下げる効果があるとした。2060年時点ではさらに悪影響が浸透し、年間2.0-2.9ポイントの押し下げ効果が生じると予想した。

現時点では、経済成長に及ぼす悪影響は、ユーザーのメンタルに及ぼす影響と、就労中の利用に伴う生産性の低下という2つの要因に由来する。前者については、睡眠の質の低下や、精神疾患に陥るリスクの増大などが悪影響を引き起こす要因となる。治療にかかる直接の費用と間接的な費用(欠勤、就業不可など)を合算すると、推定で年間50億ユーロ程度となり、これは国内総生産(GDP)の0.2%に相当する。後者については、就労者が就労中に個人的なスマホ利用などで失う労働時間が1人当たり1日20分から2時間30分に上るとされ、これに加えて、就業に戻って集中力が回復するまでのロスタイムも発生する。これらによる生産性の低下が年間100億ユーロ(GDPの0.4%相当)に上る。両方を合算すると、年間0.6ポイント分ということになる。 より長期的には、将来の就労者の能力低下により引き起こされるマイナス効果が問題となる。子どものスマホ利用時間が長いほど、数学の学力が低下することが知られており、将来的に労働力が劣化してゆく可能性がある。これによるGDPの目減り分は、2060年時点で1.4-2.3%に達するといい、上記を合算すると、2.0-2.9%という数字が得られる。なお、この推計には、最近に普及が始まったAIの影響は考慮されていない。ただし、この報告は、仮定の多い推計であることを強調し、悪影響の規模がどの程度になるかは慎重に判断する必要があるとも付け加えている。

KSM News and Research