スイスUBS銀行は9月23日、フランスにおける顧客勧誘の不正事件に係り、司法当局による処分を受け入れ、総額8億3500万ユーロを支払うことに応じたと発表した。2011年に発覚した事件をこれで完全に解決した。
この事件で、スイスUBS銀行は、2004年から2012年にかけて、フランスの富裕者をターゲットに顧客勧誘を行い、無申告のスイス銀行口座を開くことを持ちかけていた。内部告発を通じて仏検察当局は2011年に捜査を開始し、資金洗浄・脱税ほう助・違法勧誘の容疑で訴追した。裁判は最高裁まで争われ、2023年の最高裁判決は、USBの有罪を認めたが、18億ユーロという高裁が下した罰金刑の金額については取り消し、罰金額及び原告の国に対する賠償金の金額の再検討を行うよう、高裁に差し戻していた。差し戻し審と並行して、USBは司法当局との和解に向けて協議を重ねてきた。CRPCと呼ばれる手続き(有罪を認めた上で量刑を取引で決める手続き)を利用して、今回の処分が決まった。UBSは具体的には、7億3000万ユーロの罰金処分を受け入れ、1億500万ユーロの損害賠償の国への支払いに応じた。
2019年の第1審判決では、37億ユーロの罰金(加えて国への賠償金8億ユーロ)という記録的な額の処罰が下されており、それと比べると、最終的な処分はUBSにとって痛みが小さくなった。検察側はこれについて、脱税していた個々の顧客の追徴課税額などを考慮した上で金額が決められたと説明している。スイス銀行が守秘義務をたてに攻撃的な資金集めをしていた過去の一時代が終了したことを象徴する顛末だという評もある。