マクロン大統領は10月10日夜、ルコルニュ首相の続投を決めた。新内閣の名簿が12日夜に公表された。
ルコルニュ首相は、政府に協力する共和党との折り合いがつかなくなり、1週間前に辞任したばかりだった。マクロン大統領は辞表を受理した上で、政治勢力と再協議を行うよう要請、首相は協議を経て、解散総選挙を見送り、新内閣が新たに発足するとの展望を示していた。自らは首相に再就任しない考えを示していたが、大統領は続投を決めた。
新内閣は、1週間前に発表されたものと比べて、市民社会からの代表者を増やし、政治色を薄めた布陣となった。前内閣で留任していた主要閣僚の共和党のルタイヨー内相(共和党党首)、ボルヌ教育相、バルス海外相らは内閣を離れた。前内閣の新人事で特に風当りが強かったルメール軍隊相(元経済相)ももちろん再任されなかった。その一方で、ダティ文化相、レスキュール経済相、バロ外相、フェラーリ・スポーツ相、タバロ運輸相、ジュヌバール農相、ドモンシャラン予算相は再任された。ボートラン保健相は軍隊相に就任し、1週間前に入閣したばかりのムチュー氏(右派オリゾン所属)は海外相に抜擢された。
新入閣者は、「市民社会」の代表者と実務家が多い。内相には、パリ警視総監を務めているヌニェス氏が起用された。ヌニェス氏は閣僚経験者で、左右のいずれの陣営とも関係が良好であることが買われた。このほか、仏国鉄SNCFのファランドゥー前CEOが労相に、環境団体WWFフランスのモニク・バルビュ氏がエコロジー移行相に、食品小売大手システムUのトップを務めたセルジュ・パパン氏が中小企業・貿易・手工業・観光・購買力相に起用された。教育相には教育省の高級官僚出身のジェフレ氏が起用された。
大物閣僚としては、ダルマナン法相が留任したのが目を引く。ダルマナン法相はルコルニュ首相との関係が良好で、留任を受け入れた。政治色を薄める目的で、新内閣の入閣者は2027年の大統領選挙への出馬の意欲のない人物を選ぶという建前で、法相は政治的野心があるものの、内閣にとどまる限りは出馬に動かないことを受け入れた。
政治的なバランスでみると、マクロン大統領のルネサンス所属が11人、共和党が6人、MODEMが4人、オリゾンが3人、UDIが1人、LIOT(中道野党の院内会派)が1人という布陣になっている。ただし、共和党は入閣者の除名を決定し、ルコルニュ新内閣と距離を置いた。ルコルニュ首相は13日に予算法案を提出し、14日には施政方針演説を行うが、政権の延命には、社会党など左派の一部が不信任案に合流しないことが必須条件となる。年金改革の行方など、一触即発の難問が多く、ルコルニュ首相が不信任案を乗り切れるかどうかはまだ分からない。