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中国の対EU貿易黒字、拡大が鮮明に

仏民間経済研究所Rexecodeが中国税関のデータにもとづいて算定したところによると、中国の10月までの直近12ヵ月の対欧州連合(EU)貿易黒字は3100億ドルとなり、対米貿易黒字(3020億ドル)を上回った。対EU貿易黒字が対米貿易黒字を上回ったのは、2008年のサブプライム危機時を除くと初めてという。トランプ関税の影響を考慮すると、対米黒字は縮小に向かうと考えられ、対EU黒字が対米黒字を上回る状況が今後も続くことが予想される。

中国の対EU貿易黒字は2019年以来では2倍近くに拡大した。Rexecodeは、その原因は、EUが歴史的に競争で優位だった部門(自動車や航空機、工作機械、化学など)において、中国製品の品質が向上していることにあり、今やEUは域内市場においても、域外市場においても中国との競争に圧迫されていると指摘している。これは、中国が世界貿易機関(WTO)に加盟した2000年代はじめの「中国ショック」に次ぐ、第2次中国ショックだという。

中国との競争は特にドイツの産業と輸出に逆風となっている。2019年から2024年にかけて、ドイツの対中輸出は9%減少し、中国の対独輸出は40%増加した。ドイツの対中貿易収支は、6年前には300億ドルの黒字だったのが、今年10月の直近12ヵ月には250億ドルの赤字となった。ケルン経済研究所(IW)によると、2025年1-6月期に中国の対米輸出は前年同期比で16%近く減少したが、対独輸出は約11%増加し、しかも輸出品価格は平均で4%近く低下した。安価な中国製品が大量にドイツ市場に流入している様子がうかがわれる。中国との競争は、独産業の苦境の唯一の原因ではないにせよ、大きな一因ではある。IWは、中国の産業が手厚い国家補助と人民元の過小評価により不当競争を引き起こしているとし、EUは相殺関税により公正な競争を回復させる必要があると主張している。

一方、ブリュッセルのシンクタンクBruegelは、欧州委員会が中国と協力合意を結び、EU市場へのアクセスと交換に、EUへの投資強化と、EU企業との合弁事業創設を中国に求めることを提案している。

KSM News and Research