会計検査院は12月2日、人口動態が公共財政に及ぼす影響に関する報告書を公表した。少子化と人口高齢化が国の財政に及ぼす影響を考慮した政策推進が急務だと警告する内容。
フランスの合計特殊出生率は2024年に1.62まで低下。人口構成も高齢化が目立ち、65歳以上が全人口に占める割合は、2005年時点では16.3%だったが、2024年には21.8%まで上昇しており、2070年時点では30%近くまで上昇することが有力視されている。それに伴い、20-64歳の労働力人口も縮小。全人口に占めるその割合は、2070年時点で50%を割り込み、現在と比べて340万人減の3460万人まで後退する見通しとなっている。
報告書は、社会の高齢化が進む中で、まず、必要な対策を進めない限り、労働力の高齢化に伴い生産性が低下し、経済成長を押し下げるリスクがあると指摘。これに伴う税収等の目減りと、高齢化に伴う公共支出の増大の板挟みになって、国の財政収支が悪化する恐れがあることを強調した。生産性低下の対策という点では、年齢が高めの就労者が技術進歩に対応できるようにするための職業教育の増強などを提言した。 支出面では、2023年時点で、国の支出に占める高齢者関連の支出(主に年金支出等)の割合は40%を超えており、これは1998年と比べて11ポイント高い水準となっている。1人当たりの支出水準をこのまま維持すると仮定した場合、GDPに占める公的支出全体の割合は、2023年の57%が、2070年時点では60.8%まで上昇する。逆に、57%という数字を2070年時点でも維持すると仮定した場合には、1人当たり支出を6.1%削減することが必要になる。会計検査院は、しかるべき選択をして、それに沿って政策を運営し、準備を進める必要があると指摘。移民労働力の受け入れという選択肢については、移民の労働市場への統合に難があり、いずれにしても特効薬にはなりえないとし、60-70歳の層の就労率引き上げといった選択肢も含めて、全体を見据えた対策を進める必要があることを強調した。