欧州委員会のクビリウス委員(防衛・宇宙担当)は1月11日、スウェーデンで行った演説で、欧州統合軍を設立する必要性を主張した。また、欧州の安全保障関連の問題を扱う「欧州安全保障理事会」の設立も提唱した。欧州は数十年もの間、米国による安全保障の傘のもとで軍事投資を低く抑えてきたが、トランプ米政権によるベネズエラの軍事作戦や、イランへの軍事介入の警告、グリーンランドの領有主張などで、国際関係は大きな転換期を迎えている。
トランプ大統領が10万人の米常設軍をアジアに配置転換する可能性を示唆するなど、欧州が再軍備を強いられるなかで、クビリウス委員は、10万人規模の常設欧州軍を設立する案を提示した。欧州軍の構想自体は2010年代に提唱されていたが、同委員は欧州連合(EU)の防衛能力拡大へ大胆に舵を切る時が来たことを強調。米国の軍事体制を例に引きながら、27ヵ国の軍ではなく単一の軍として行動できる体制を整えるべきだと主張した。論拠として挙げられたポリティコ紙の調査によると、スペイン、ベルギー、ドイツでは、「自国の防衛が欧州軍により行われる方がよい」と答えた人が70%を占めている。
しかし、欧州軍を設立するには、最高司令部をどうするかなど、解決すべき課題が多く残されている。防衛は主権の根幹に関わる問題なだけに強い抵抗が生じるのは必至で、また、EUは親ロシアの加盟国も抱えている。EUは2025年に共同債に基づく大規模な欧州再軍備計画を開始し、装備の生産効率や相互運用性を高めるために、複数国による共同プログラムの促進を図っているが、軍事は主権重視の分野だけに、協力体制の構築は容易ではない。
クビリウス委員は、英国を含む主要国から成る「欧州安全保障理事会」の設立も訴えており、米国がグリーンランドに侵攻した場合などに備え、防衛に関するEUの意思決定を円滑に行えるようにするべきだと主張した。同理事会は主要な常任理事国と輪番制の非常任理事国で構成し、合計10-12ヵ国とする考えを提案した。目下の優先課題は、ウクライナ情勢における力関係を変え、ウクライナの敗戦や不当な和平を回避することだという。
3月末に開かれる欧州理事会では安全保障を巡る議論が中心テーマの一つとなる。