欧州連合(EU)は、新車のゼロエミッション化を2035年までに実現するという目標を設定しているが、自動車業界の要望などもあり、その見直し作業が進められている。去る12月時点で欧州委員会が提示した見直し案が、欧州議会における審議の段階に入った。右派勢力がさらに踏み込んだ規制緩和を盛り込んだ修正案を提出して審議が紛糾している。
欧州委の提案は、2035年のゼロエミッション化達成という目標を大枠として維持した上で、二酸化炭素排出量の削減は90%にとどめて、残りの10%を、代替燃料の使用(エンジン車の販売継続が可能になる)か、低炭素鋼材の使用に切り替えることにより達成することを認める柔軟性を追加する内容だった。これに対して、欧州議会における最大勢力である右派の人民党(EPP)所属のサリニ議員は、同法令案の報告者として、一連の修正案を追加。修正案は、ゼロエミッション化という大枠目標を廃止し、代わりに、二酸化炭素排出量の削減率を、乗用車について90%、商用車について80%と設定。さらに、上記の柔軟性の利用枠も17%相当にまで拡大することを認める内容となっている。このほか、ハイブリッド車の二酸化炭素排出量の算定基準を厳格化するという欧州委の方針についても、手続きを凍結して現状維持とすることを提案。これはハイブリッドが二酸化炭素排出量の点で引き続き有利となることを意味している。
こうした修正案には、欧州議会内の環境派のみならず、人民党と協力する中道派からも反対する声が上がっており、審議の行方は予断を許さない。加盟国の間にも温度差があり、イタリアとドイツは修正案に賛成しているが、フランスとスペインは難色を示している。自動車業界においても立場が同じであるとは言い難い。フランスのルノーやステランティスは商用車の規制緩和に重点を置く対応であるのに対して、ドイツのメーカーはPHEVの擁護を重視している。