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フランス・チームはどうして負けたか

紀元前4世紀のこと、ガリアのケルト人の軍勢がローマを目指して攻め入った。現在のアニエーネ川にかかる橋を挟んでローマ軍と対峙した。ケルト人の中から大男が歩み出て、一対一の対決で決着をつけようじゃないか、我と思わん者は前に出でよ、と挑発する。ローマ王の許しを得て、若いティトゥス・マンリウスが挑戦に応じた。歩兵用の長盾を持ち、ヒスパニアの短剣を手に進み出る。大男はそれを見るなり相手を愚弄し、信頼すべき人々の伝えるところによれば、べろべろと舌を出しては嘲笑った。金細工を施した大男の彩色甲冑はきらりと光る。対する小柄なローマ人は機動性重視の地味な装備である。大男は大地も割れよと剣を振り下ろす。小兵は攻撃をかわし、懐に飛び込むと一撃、また一撃と短剣を振るい、鎧を突き破った。大男はどでーんと倒れ、その屍は大地に広々と横たわった。

ティトゥス・リウィウスのローマ史の第7巻にあるエピソードである。優勝候補の呼び声が高かったフランスがあっけなくスペインに完敗したのを見ながら、この話を思い出した。フランス・チームはこの準決勝まで、各人の圧倒的な能力により勝ち上がってきた。しかし、そこには脆さもあった。特に攻撃のパターンが単調だった。オリゼが神々しいパスを出して、エムバペが見事なゴールを決めるか、デンベレが一人旅であらこんなところからシュート決まったわ、という以外の攻め手は見当たらなかった。まるで「キャプテン翼」のようなサッカーである。逆に、そのあたりが封じられてしまうと、なすすべもなく試合終了という次第になる。格別に賑やかだった18日の3位決定戦でも、そのへんの事情は変わらない。 圧倒的な個人の能力を重んじて、それを伸ばそうとするのはフランスのよいところでもあり、また悪いところでもあるだろう。「移民系」が多いことを材料に、フランス・チームにはフランス人は一人もいない、などとする悪口が内外から聞こえていたけれど、ティトゥス・リウィウスの伝聞を信じるならば、ガリア時代からわれらがナショナルチームに至るまで、フランスらしさは受け継がれている。そう考えれば愛おしくないか。それにしても、「ヒスパニアの短剣」は何やら予言めいていますねえ。

KSM News and Research