サウジアラビアのムハンマド皇太子が先に訪仏した際に発表された「ドラゴンボール」のテーマパーク建設計画はフランスで反響が大きい。待望論がある一方で、地元には警戒感もある。予定地のパリ郊外セルジー・ポントワーズは、RER(郊外連絡急行)A線の西の終点の一つという距離感で、これは、同じくA線の東の終点であるディズニーランド・パリと似たような立地となる。市街地のはずれにある予定地の向こう側には農地が広がっており、地元セルジー・ポントワーズ自治体連合の副議長を務めるマタラン氏(左派)は、日刊紙ルパリジャンのインタビューに応じて、地域のアイデンティティを擁護すると述べて、農民らの懸念に配慮する姿勢を示している。 保守系日刊紙のルフィガロは、計画の背景と権利関係の複雑さについて報じている。マクロン仏大統領の漫画好きはよく知られているところで、去る3月に大統領が訪日した際には、ドラゴンボールでフランス語版の吹き替えを務めたブリジット・ルコルディエ氏(「ドラゴンボール」の孫悟空、「ドラゴンボールZ」の孫悟飯)を随行団に加えたほどである。ルフィガロ紙は、アラブ首長国連邦ドバイに対抗してソフトパワー王国となる野望を抱くサウジアラビアのムハンマド皇太子が、「ドラゴンボール」を地政学的な手段として見据えていると報道。そのサウジと、比較的に無邪気な漫画・アニメ好きのフランスの利害が一致したのが今回の誘致劇の背景でもあろうか。サウジアラビアの政府系ファンドPIFは、傘下のQiddiyaを通じて、2024年3月に「ドラゴンボール」のアニメーション等の諸権利を管理する東映アニメーションとの間で提携を結び、リヤド郊外にテーマパークを建設することを決めており、パリ郊外にも第2弾が整備されることになる。ルフィガロ紙が報じる「ドラゴンボール」の権利関係は複雑で、漫画を出版した集英社、集英社出身の伊能昭夫(いよくあきお)氏の権利管理会社、ビデオゲームを製作するバンダイナムコ、アニメーションと一部ライセンスを管理する東映アニメーションが関わってくる。サウジアラビアの経験の浅さを危ぶむ声もある。