上院が設置した調査委員会が7月8日、企業対象の国家補助に関する報告書を公表した。国家補助の把握と評価を徹底し、支援を受けた企業に対する条件を明確化するよう勧告した。
調査委員会は昨年冬に、超党派の呼びかけにより設置された。タイヤ大手ミシュランや食品小売大手オーシャンが、公的援助を受けていたにもかかわらず人員削減を決めたことを問題視した議員らが、国家補助の現状の問題点を調査する目的で設置を請求した。大手企業の経営者や専門家、労使代表などを対象に聴聞を行った上で、26項目の政策提言を盛り込んだ報告書がゲー議員(共産党)により作成され、全会一致で採択された。
報告書はまず、国家補助の総額が政府により把握されていないことを問題視。調査委は自らデータを集めて、2023年に2110億ユーロとする概算を算定した。この数字には、国の補助金、BPIフランス(公的投資銀行)経由で付与された援助、税額控除等と社会保険料減免措置が合算されている。市町村・市町村連合による補助金、地域圏による補助金、欧州連合(EU)による補助金は含まれていない。報告書は、正確な数字がわからなければ業績評価もできないと指摘し、恒常的に把握する仕組みを整えるよう政府に勧告。具体的には、2027年1月1日までに、INSEEに国家補助の明細とその年次改定を依頼するよう提案した。フランスでは法人課税の水準が高いことがあり、また、米中が多額の援助を自国企業に行っている現実もあるため、国家補助の金額そのものについては判断すべき段階にはないとしたが、聴聞に応じた経済界の代表も、法人各種課税の規模の把握を同時に伴い、純額ベースで企業向け支援について把握・評価することに賛同した。
報告書は、国家補助の条件となる雇用関連等の義務については、明確化されていないことも多く、義務に違反した場合の制裁等の実効に乏しいと指摘。報告書は、重大な違反行為で有罪判決が確定した企業には援助の返済を求めることや、援助対象の事業を2年以内に外国移転した企業に対しても、援助の返済に関する規定を設けるべきだと勧告した。さらに、援助金額は配当金算定の基準となる利益から控除することを義務付ける(社会保険料の減免措置については控除を求めない)ことも勧告した。これに絡んで、報告書は、政府に対して、ミシュランに付与された援助の返済を求めるよう求めた。2020年に閉鎖された国内拠点に係り、社会保険料の還付方式による援助(CICE)が付与されていたが、調査委は、ミシュランが同工場向けに購入した機械設備が使われることがないまま外国に搬出されたことを特に問題視している。ミシュランの側も、CICEによる援助がそのまま購入に充当されたわけではないが、返済するのはやぶさかではないと聴聞の際に回答していた。 報告書はこのほか、税額控除等の支援の効果を評価する仕組みに欠陥があるとして改善を求め、さらに、制度の複雑さも把握や評価を困難にしているとして、その改善を求めた。