下院は12月9日、社会保障会計予算法案を第2読会にて採択した。採択が危ぶまれていたが、ルコルニュ首相は、政治勢力の説得を経て、僅差での採択に成功した。同法案はこれで翌週にも最終的に可決される道が開けた。
投票では、賛成247、反対234という僅差で採択がなされた。ルコルニュ内閣の支持母体であるEPR(マクロン大統領派)とMODEM(中道)に加えて、社会党とLIOT(中道)の大部分が賛成に回った。右派の共和党とオリゾンは、党としては賛成票を投じない(棄権)ことを決めていたが、共和党からは18人、オリゾンからは9人が賛成票を投じ、これはルコルニュ首相にとって貴重な援軍となった。また、審議の最終段階で、環境派の協力を取り付けるために政府は一連の譲歩(医療支出3%増など)に応じ、これが決め手となって、環境派議員は棄権する形で成立に協力した。極右政党RNとそれに協力するUDR、そして、左翼政党LFI(不服従のフランス)と共産党が反対票を投じたが、賛成が僅差で上回った。
ルコルニュ首相は、年金改革の凍結に応じるなどして左派陣営に対して譲歩を重ねて、収支改善の展望を曇らせる代償を支払った。これは右派陣営の反発を招いたものの、きわどいところで協力(棄権)を取り付けて、法案採択を成功させた。これは、話し合いにより妥協点を探るという、首相が標榜した国会運営の新たなあり方の成功であり、ドモンシャラン予算相の交渉力の貢献が大きかったという評価もある。予算法が成立しない場合には国に打撃が及ぶとして、妥協を説得したことが成功した。 社会保障会計予算法案は今後、数日中に上院で第2読会の審議に入り、上院投票後に下院で最終読会が行われ、予算諸法案における下院先議権に基づいて最終的に可決される運びとなる。ただ、下院における力関係の微妙なバランスを考えると、番狂わせが起きる可能性は否定できない。国の予算法案の審議も予断を許さない状況が続いている。