フランスの公衆衛生庁と食品環境労働衛生安全庁(ANSES)は9月15日、農薬暴露に関する合同調査「PestiRiv」により、ぶどう畑の近隣に居住する人の農薬暴露度が、それ以外の住民より有意に高いことが判明したと発表した。この調査結果は、米国やオランダでの類似の調査結果とも合致しているという。
PestiRivは2021年から2022年にかけて、ぶどう栽培が盛んな6地域圏の265ヵ所において、1946人の成人と742人の子どもを対象とする尿と毛髪の検査により、56種類の農薬の暴露量を測定した。ぶどう畑から500m以内の近隣に住む人のグループと、ぶどう畑から5km以上、あらゆる農業栽培地から1km以上離れて住む人のグループを比較した。人体暴露量以外に、ハウスダスト中の農薬残留量と空気中の農薬濃度も測定した。また、直接暴露と間接暴露を区別するために、農薬散布期間とそれ以外の期間を分けて調査した。
尿検査では、ぶどう畑から500m以内のエリアの住民グループの曝露量が、その他のグループよりも15-45%高かった。また500m以内のエリアにおけるハウスダスト中の残留量は、農業栽培地から1km以上離れたエリアの最大11倍、空気中濃度は最大12倍という結果が出た。農薬散布期間の暴露度は、それ以外の期間と比べて、尿検査で最大60%高く、ハウスダスト中で最大8倍超、空気中では最大45倍だった。
さらに、3-6歳児の尿中の暴露度が特に高いことも判明した。これは子どもが地面に触れる頻度が高く、触れた手を口に入れることも多いのが原因と考えられる。なお、屋外で過ごす時間が長い人や住居の換気を定期的に行う人のほうが、暴露度が高いことも確認された。
2歳以下の幼児は調査の対象外であり、ぶどう栽培に携わる人がほとんど調査に参加しなかったなど、物足りない部分もあるが、農薬を多量に使用するぶどう栽培地の近隣では農薬暴露も明らかに大きいことが大掛かりな測定調査により確認された。 調査報告は、農薬の使用を必要最小限に制限し、2030年までに農薬使用量を2013-15年と比べて50%削減することを定めた「Echophyto2030」プランに従って使用量を減らすことを推奨。それに対して、ワイン業界団体CNIVは、ぶどう栽培業者が2013年から2024年にかけて農薬使用量を8.9%削減したことなどをあげて、農薬削減に積極的に取り組んでいることを強調している。