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「01 日本航空パリ支店 ルガロ雅子さん」

日々の暮らしで触れる機会が増えてきた言葉、「SDGs(※)」。サステナブルな未来に向けた、在仏企業の取り組みを掘り下げます。

※SDGs…Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略語。2015年9月の国連サミットで採択され、「地球に住み続けるために、より良い世界を作っていこうという目標」を指す。



航空会社だからこそできる
人と国と物をつなぐ、サステナブルな未来への取り組み


【プロフィール】

ルガロ雅子(るがろ まさこ)さん 日本航空パリ支店総務セクション
2007年に入社して以来、総務・経理を担当。2021年に発足したSDGs推進プロジェクトに加わり、社員全員の意見をとりまとめながら、自発的にアイデアを提案し、精力的にプロジェクトの遂行に努める。趣味はスポーツで、長年続けているというバドミントンは選手として試合にも出場するほどの腕前。



はじめに

 世界的な市民運動「World Cleanup Day」に参加し、パリ・オペラ地区をはじめとしたフランス4か所で清掃活動を実施する日本航空パリ支店。#清掃活動実施レポート
 この活動をはじめ、「安全・安心」と「サステナビリティ」という二大目標のもと、社員一人ひとりのアイデアでユニークなSDGs活動を数多く実施し、在仏日本企業間のみならず、日仏の交流も広げています。
 日本とフランスをつないで60年を迎えたパリ支店だからこそできる、SDGsに対する取り組みについてお話をうかがいました。


有志のメンバーでSDGsチームが発足

廃材再利用の一環として作られた、JALパリ支店記念トロフィー。


── SDGs達成に向けて多様な取り組みを開始するに至った背景について教えてください。

 日本航空では、2030年までに社員全員で達成すべき目標として「JAL Vision 2030」というものを掲げています。その中の大きな柱のひとつが「安全・安心」。お客さまに「安全」で「安心」にご利用いただける航空会社を目指しています。そしてもうひとつの要が「サステナビリティ」。まさにこれがSDGsに当たるものです。これらを二大柱に、社員一丸となってさまざまな課題に取り組んでいます。

 パリ支店でもこの目標に向かって何ができるかを考え、2021年にSDGsチームを発足しました。まず初めに「SDGsとは何か?」を社員全員で考えることから始め、その後「SDGsチームに入ってこんなことを実現したい!」という社員を募り、チームを構成しました。それ以前にも「折り紙ヒコーキ教室」や「航空教室」、「おもてなし講座」などの活動は行っておりましたが、“SDGsチーム”として旗揚げしたのは2021年です。そこから毎月ミーティングを行い、全社員に対し、SDGs達成の取り組みに向けて実現してみたいことを募集しました。
 寄せられたすべてのアイデアは、一つひとつの取り組みの目標達成に向けて道筋をつけ、何年経ってもやっていこうというふうにしました。どんなに難しいことでも、まずは挑戦してみるということを大切にしています。

── では、ルガロさんは自ら希望してチームに加わったということですね?

 はい、そうです。当時はコロナ真っただ中。こういうピンチのときこそ何かできることはないかとすごく悶々としていたんです。コロナってすごくネガティブなことばかりがフォーカスされますが、今までできなかったことを始めるためのよいきっかけでもあると思っていました。そのときにSDGsの話があり、これはチャンスだ! と。会社にも、社会にも貢献できる、こんないい仕事はないなと思ったんです。
 それから、もう一点。フランスにはパリ支店のほか、パリ=シャルル・ド・ゴール空港に旅客と貨物のセクション、トゥールーズに駐在員事務所がありますが、実は普段一緒に仕事をする機会がなかなかないんです。ずっと別のセクションの仲間とも仕事をしてみたいという気持ちがあったので、今回のSDGsチームの発足ではその点も魅力のひとつでした。


社員の心を一つにする、JALフィロソフィという存在

社員全員が携帯するJALフィロソフィは、日本版と英語版がある。


── 全社員に向けてSDGsについての理解を促し、アイデアを募るということはそう簡単なことではないと思うのですが、何か秘訣があったのでしょうか?

 最初は説明会を開き、その内容をしっかりと理解してもらうことから始めました。例えば、水を流しっぱなしにしないだけでも一つのSDGs活動ですよね。今までしていたことが実は世界を救うことにつながる。一見、難しくてよくわからないと思われそうですが、身近な例とともに説明することでイメージしやすくなると思います。
 それから、JALには「全社員の物心両面の幸福を追求し、お客さまに最高のサービスを提供し、企業価値を高め、社会の進歩発展に貢献します」という企業理念があるのですが、まさにこの“企業価値を高め、社会の進歩発展に貢献する”というのが「サステナビリティ」に当たります。SDGsという言葉が生まれる前からあるものです。この点もSDGsの理解に役立ったのだと思います。

 実は、JALにはこの企業理念を始め、社員全員が持つべき価値観を記した「JALフィロソフィ」という本があるんです。2010年にJALが破綻をした際に、稲盛和夫名誉顧問がJAL経営幹部、社員と共に作成、導入しました。この「JALフィロソフィ」は、日本航空が、どのような考え方をベースに経営するかを示す指針で、原点には、みんなで一つの目標に向かい、同じツールを持って働いていこうという共通の思いがあります。この中では、例えば、販売部門ではない空港旅客のスタッフであっても、セールス活動に協力するなど、「自分の仕事ではないから関係ない」という姿勢ではなく、“私たち一人ひとりがJAL”であるということが謳われているんです。一人一人が思いやりのある優しい心で行動するなら、JALは優しさのある会社になります。そうした意識を持って、日々この本を携帯し、定期的に研修も受けて勉強しています。

──時世によって新しいテーマが生まれてくるかと思いますが、この本は内容が随時更新されていくのでしょうか?

 いいえ、本の内容は変わりません。その時々によって、内容の理解の仕方が変わっていきます。例えば、「コロナ禍だからここはこうだよね」というふうにその都度ディスカッションをし、ここを原点にみんなが考えていく、ということなのです。SDGsに関しても、JALフィロソフィを通して理解を深め、売り上げだけでなく、社会のために貢献することも大事にしたい、そしてできればそれをビジネスにつなげ、どちらも存続することが一番いいと考えています。その方向を探りながら、みんなで取り組んでいます。


CO2排出削減に向けた取り組みと、パリ支店だからこそできる活動

ご用意いただいた資料とともに、さまざまなSDGs活動について語るルガロさん。


── 具体的にはどのようなSDGs活動をされているのでしょう? また、世界各国の支店でオリジナルな取り組みがあれば教えてください。

 では、まず本社での取り組みの一例を紹介します。それは航空会社として一番やらなければいけない「ゼロエミッション」です。私たちは毎日航空機を飛ばしていると同時に、大量のCO2を排出してしまっています。それをいかに削減するかを大きな目標として掲げています。例えば航空機の燃料について、Sustainable aviation fuel (SAF) という代替航空燃料の開発に取り組んでいます。実際に使用している燃料を100%とすると、現在はそのうちの1%未満しか使用していないのですが、それを2030年までに10%に、さらに2050年には45%まで引き上げることを目標にしています。11月には羽田〜沖縄間でこのSAFを使用した「サステナブル・ジェットフライト」を飛ばし、機内食のカトラリーもリサイクルできる木製を使用し、すべてサステナブルに特化したフライトを行いました。そのほか、なるべく少ない燃料で飛べるようエアバス社からA350型機を購入し、CO2排出の削減に取り組んでいます。
 燃料以外にも、飛行機のエンジンを水で洗うことで年間2万トン、飛行機が地上を走る際にエンジンのひとつを切ることで年間5千トンのCO2削減にもなります。普段のフライトでも、日差しが強い日など、機内の日除けを下げていただくだけで年間800トン、貨物コンテナを軽いものに置き換えることで年間7,100トンの削減につながっています。

 続いてパリ支店ですが、パリ支店では主に次のような取り組みを実施、または準備を進めています。


■ 盲導犬アソシエーションとの取り組み(準備中)
空港にて視覚障がい者の方とのコミュニケーションを円滑にするために、盲導犬協会による講習会を実施。
■ 受託手荷物のビニールカバー使用の廃止
環境保全に向けた受託手荷物ビニールカバー使用の廃止。
■ トゥールーズ駐在事務所とエアバス社とのコラボレーション
D&I(ダイバーシティー&インクルージョン)をテーマとしたエアバス社員とJAL社員とのディスカッション。
■ JNTO(日本政府観光局)とのコラボレーション(準備中)
エコツーリズムをテーマとしたJNTO(日本政府観光局)とJALのディスカッション。
■ 義足、義手を作るアソシエーションへの寄付
子供たちに提供できる義手・義足を作るための寄付をし、障がい者福祉を増進。
■ Food loss on board meal
フードロス削減に向けて、搭載する機内食数を適切化。
■ Sensibilization handicap(準備中)
社内での人材の多様化を図り、働きやすい環境を作る。
■ パリー東京線就航60周年を記念して、環境保全を考慮したサステナブルな記念品を搭乗していただいたお客様に配布。
① 植樹会社エコツリー社の植樹ギフトカード
② 航空部品廃材を再利用したJAL特製ピストンキーホルダー
③ SDGsの活動に注力するジャン=ポール・エヴァン氏による当日限定ボンボンショコラ
④ 100%オーガニックコットンと自然由来の染料で作ったJALオリジナル風呂敷
■ 手話講習
空港にて聴覚障がい者の方とコミュニケーションを円滑にするために、手話講座を社内で実施。
■ ファーストエイド(応急手当て)研修
応急手当てを身につけ、全ての人の健康と福祉に貢献。

 また、フランス以外での一例としてこんなユニークな活動も行っています。


■ マングローブのプランテーション【インドネシア・ジャカルタ】
世界環境デーに社員自らマングローブ林で植樹し、環境保全。
■ Full moon festivalへの参加【ベトナム・ホーチミン】
孤児院の子供たちへ食べ物の寄付をすることで飢餓を減らす取り組み。
■ ごみの分別化とオフィスのフリーアドレス化【オーストラリア・シドニー】
社内環境の整理と廃棄物の削減を行い環境保全。


一人ひとりが他者を思いやれる支店に


── ありがとうございます。最後に、現在の業務に対する想いと、今後、SDGsに限らず、ルガロさんがパリ支店で実現したいことを教えてください。

 今、仕事をしていてすごく楽しいです。SDGsの数々の取り組みは、私がゼロから始めたわけではなく、諸先輩の方々が作ってきた努力の歴史と、現社員みんなの努力があって成り立っています。「これをやりたい!」と思ったときに、社会のため、会社のためになるということをきちんと説明すれば、わかってくれる会社です。もちろん常に楽しいことばかりではありませんが、総合すると楽しいなって思いますね。そしてこの難しい世の中で、仕事の役割をもらえてお給料をいただけるということは、本当に感謝すべきことだと思います。
 また、今後についてですが、「“利他の心”を持った支店を作る」というのが目標です! JALフィロソフィの根幹にあるのは“利他の心”を持った社員になってほしいということだと思うんです。“利他の心”と一言で言うとすごく簡単ですが、普段“自分”を優先して考えてしまいがちなところをお客さまを優先するとか、一緒に働いている仲間を優先するとか、自分ではない他の人を思って、思いやりを持って仕事ができればすごくいい会社になると思うんです。そのためにも日々、「このJALフィロソフィをみんなで読もうよ」とか「勉強しよう、ディスカッションしよう」と呼びかける努力をし、SDGsという活動の輪を広げ、新たな挑戦に果敢に取り組む努力をし続けていきたいです!



日本航空

設立1951年。世界が大きく動き、社会の価値観が変化していく中、JALグループは、社会とグループにとって普遍の価値である「安全・安心」と「サステナビリティ」を実践しながら多くの人々やさまざまな物が自由に行き交う、心はずむ社会・未来を実現し世界で一番選ばれ愛されるエアライングループを目指しています。

JAL /サステナビリティについて:www.jal.com/ja/sustainability/
JAL /世界最高のサービスでお迎えします:www.jal.co.jp/jp/ja/inter/award/
ご予約等について:www.jal.co.jp/flights/ja-fr/フランス発の航空券

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この記事の執筆者

エトワ編集部

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