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季節とともに楽しむ、アルザスの魅力
ストラスブールのクリスマスマーケット 前編

クレベール広場の夜景。奥にはストラスブールのクリスマスマーケットのシンボル、巨大ツリーが輝いている。

冬のアルザス地方といえば何を思い浮かべますか? 本連載では、現地在住でフランス政府公認ガイドの資格を持つ加藤淳子さんが、季節ごとのアルザスの楽しみ方をご紹介。今回はアルザスの冬をテーマに、その魅力をお伝えします。

□ 本連載の過去の記事はこちら↓
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アルザスといえばクリスマス!


 日ごとに寒さが増し、あっという間に日没を迎える年の瀬、アルザスは一年のうちで最も特別な輝きをまといます。それはクリスマスシーズン。フランスの中で最もクリスマスを盛大に祝うとも言われていて、イルミネーションがあちこちを色どり、大小さまざまな広場に立つマーケットからはヴァンショー(ホットワイン)の湯気と香りが立ちのぼります。

 アルザスといえばクリスマス、クリスマスといえばアルザス! というほどアルザスにとってクリスマスは一年のうちで最も大事なシーズンです。伝統行事や風習、クリスマスのお話には事欠きません。今回はストラスブールのクリスマスマーケットにフォーカスして、アルザスの魅力をご紹介します。


ストラスブールのクリスマスマーケット

クレベール広場。クリシュキンデルスメリクから移ってきたたくさんのシャレが並ぶ。

 アルザスのクリスマスで欠かせないものといったら、やはりクリスマスマーケットではないでしょうか。ストラスブールのクリスマスマーケットは、毎年11月の最後の週末に始まり12月24日までの約1か月毎日開催されます。時代の変遷を経て、現在は旧市街グランディル(Grande Île)にあるさまざまな広場を利用して市が立ちます。クリスマスマーケットに立つ小屋のことを山小屋を意味するシャレ(Chalet)と言いますが、ストラスブールのクリスマスマーケットには300以上ものシャレが軒を連ねます。毎年約200万人がこのシャレの合間を縫い、マーケットを楽しむと言われていましたが、2022年にはなんと約280万人が訪れ、来訪者数の記録を更新しました。グランディルは周囲4キロメートルに満たない小さな島です。その中に1か月でこれだけの人数が訪れるのですから、その賑わいたるや、目を見張ります。

 ストラスブールのクリスマスマーケットは広場によってテーマがあります。テーマを知ってマーケットを巡るとより楽しめます。そこで、おさえておきたいマーケット3つを厳選してご案内します。


① クリシュキンデルスメリク:フランス最古のクリスマスマーケット

 クリシュキンデルスメリク(Chriskindelsmärik)は、1570年から続くフランスで最も歴史あるクリスマスマーケットで、「幼子キリストのマーケット」という意味です。このクリスマスマーケットには前身となるマーケットがあり、それは年に一度の定期市でした。13世紀~15世紀の頃に遡り、その当時の定期市は「聖ニコラオスのマーケット」と言いました。定期市というのは、中世では大事な社交場であり、経済に活力を与える場でした。定期市の名はしばしば聖人の名前がつけられていて、ストラスブールの定期市は12月6日の聖ニコラオスの祭日の数日前に開かれていたことから、この聖人の名がついていました。

 ところが宗教改革の影響で聖母マリア・聖人信仰が禁止されたことから、マーケットの冠に聖人の名を戴(いただ)くのは禁止となり、1570年に「幼子キリストのマーケット」と名を変えて再出発することになりました。それに伴い、マーケットの開催期間も12月6日ではなく、キリストの生誕に合わせて、クリスマスの前3日間となりました。19世紀前半にはクリスマスの前8日間に延び、今では待降節(キリストの生誕を待つ期間で、クリスマスの4つ前の日曜日から数える)と同じく約1か月行われています。また、場所はもともとはストラスブール大聖堂の前の広場でしたが、規模が大きくなるにつれて場所を変え、1871年からはブログリ広場(Place Broglie)で開催しています。

 そして1991年になると大聖堂の北側にもマーケットは広がり、翌年にはストラスブールは“クリスマスの首都”、キャピタル・ドゥ・ノエル «Strasbourg Capitale de Noël»と銘打ったプロモーションを開始し、大小さまざまな広場にマーケットが展開されていきました。欧州で最大級のクリスマスツリーがクレベール広場(Place Kléber)に設置されるようになったのもこのキャンペーンの頃です。

*「季節とともに楽しむ、アルザスの魅力 ストラスブールのクリスマスマーケット 後編」では、ストラスブールお勧めのクリスマスマーケット3選の中から、「共有の村」「マルシェ・オフ」を紹介します。11月15日(水)公開予定です。

この記事の執筆者

加藤淳子 KATO Junko

東京生まれの埼玉育ち。 旅行で訪れたアルザス地方にすっかり魅了され、渡仏を決意。 居ればいるほどその魅力にどっぷりつかって、遂にはストラスブール大学にてフランス政府公認ガイドのライセンスを取得。 多様な歴史と文化を育む豊かで美しいアルザス地方を出来るだけ多くの方にご紹介したいと思っています。 アルザスと日本の文化・友好の橋渡しが出来たら、こんなに嬉しいことはありません。 インスタグラム&ツイッター随時更新中です。 リンクはホームページからご覧下さい。 ホームページ:www.alsacetour.com

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