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たくさんの物語を持つお菓子 マカロン 

間にガナッシュが挟まった、いわゆる「マカロン・パリジャン」のタイプ。


 「マカロンの日le jour du Macaron」があるのをご存じですか? それは3月20日、春の訪れとともにマカロンを楽しむ祭典の日。パティシエ、ピエール・エルメPierre Hermé氏の呼びかけで、2006年からフランスで始まりました。この日はマカロンを愛で、味わうのはもちろんですが、それだけでなく、Relais Desserts協会とともに毎年さまざまなチャリティー活動が行われています。 世界中で愛され、特別なお祝いの日まで持つマカロン。いったいそこにはどんな物語があるのでしょうか。マカロンの歴史や地域による違いについて紹介していきます。


ころんと丸い、愛らしいお菓子

 マカロンとは、アーモンドパウダー、砂糖、卵白をベースにして風味をつけ、生地を丸く絞って焼いたお菓子のこと。生地の間にはしばしばガナッシュやクリーム、ジャムなどが挟んであります。口にするとサクッとした軽い食感とともにアーモンドの心地よい風味、さらに間に挟まったガナッシュのしっとりとした食感と甘みが口いっぱいに広がり、絶妙な食感と風味を楽しむことができます。食後のデザートやおやつの時間にコーヒーや紅茶と合わせるのが一般的ですが、シャンパンに合わせるという一味違った味わい方も。見た目もカラフルで見栄えがするので、贈り物や手土産にもぴったり。子供から大人まで誰もが楽しめる、フランスを代表するお菓子です。


マカロンの起源とは

 そのマカロン、実はフランス生まれではないということは、意外と知られていないのではないでしょうか。諸説ありますが、マカロンはその昔、中東シリアで生まれたアーモンドのお菓子が起源と言われています。海上貿易が盛んになったことでヨーロッパに伝えられ、中世の時代には、イタリアで“マッケローネmaccherone”という名で流通していたことがわかっています。“マッケローネ”はパスタの「マカロニ」と同語で、もともと「繊細な生地」という意味を持ちます。当時は現在の一般的なマカロンとは異なり、アーモンドでできたクッキーのような薄く平べったい生地で、歯応えのあるものでした。
 フランスにやって来たのは16世紀。イタリアからアンリ2世のもとへ嫁いたカトリーヌ・ド・メディシスは、当時まだフランスで知られていなかったイタリアのさまざまな特産物を持ち込みました。そのひとつがマカロンだったのです。1660年にサン=ジャン=ド=リュズ Saint-Jean-de-Luzで行われたルイ14世とマリー・テレーズの結婚式では、実際にマカロンが振る舞われたという記録も残っています。
 マカロンはこのようにしてイタリアからフランスへやって来て、王室から市井の人々へと少しずつ浸透していったのです。

ラデュレとマカロンの歴史は長い。ラデュレのホームページにはその歴史の詳細も記されている。


地域色のあるマカロン

 マカロンというと、二つの丸い生地の間にガナッシュが入ったものを思い浮かべる方が多いかもしれませんが、実はフランスにはさまざまなタイプのマカロンが存在します。
 日本でよく見かけるガナッシュが挟んであるマカロンは、いわゆる「マカロン・パリジャンle macaron parisien」(またはマカロン・ジェルべ le macaron Gerbet)と呼ばれるもので、その名のとおりパティシエのジェルべ氏が19世紀にパリで考案したと言われています。それを、ラデュレLaduréeをはじめとした有名パティスリーがさらに魅力あるものに仕立て、マカロン・パリジャンは不動の地位を築きました。それまでのマカロンは丸いビスケットのような形で、間には何も挟んでありませんでした。
 ここでは、地域別の特徴的なマカロンのタイプをいくつか紹介します。

・バスク地方のマカロン
バスク地方のマカロンは、クリームの入っていない丸くて茶色いビスケットのような素朴な見た目。風味豊かなアーモンドが特徴的で、程よい歯ごたえとしっとり感。先に登場したサン=ジャン=ド=リュズでのルイ14世の結婚式にパティスリーアダムAdameが献上したマカロンがまさにこのタイプでした。このパティスリーは、現在もバスク地方を代表するメゾン・アダムMaison Adameとして有名です。マカロンは当時から変わることなく、現在にいたるまで同様のレシピで作られています。

・アミアンAmiensのマカロン
厚みのあるビスケットのようにも見えるアミアンのマカロンは、アーモンドパウダーのほかに、卵とハチミツが加えられています。イタリアから伝わった当時のレシピに近いとされ、こちらも生地は二つに分かれておらず、ガナッシュもクリームも入っていません。食感は外側も中側もしっとりと重みがあり、重厚感のあるリッチな味わいです。

・ナンシーNancyのマカロン
丸く平べったく、ひび割れた表面でまるで固いビスケットのよう。サクッとした表面の食感とは対照的に中はもっちり。オーブンで焼き上げるときの白い紙に乗せられたまま、1ダースごとに販売されています。実はこのマカロン、「修道女のマカロンMacarons des sœurs」という異名を持っています。その由来は、昔修道院内でマカロンが作られていましたが、フランス革命で弾圧を受けた際に、難を逃れた2人の修道女が街中の避難先でマカロン作りを再開したことによるものと言われています。現在もその発祥のお店、メゾン・デ・スールマカロンMaison Des Soeurs Macaronsでは伝統的なマカロンを作り続けています。

バスク地方で見かけたマカロンタワー(マカロン自体はレプリカ)。バスクのマカロンはこうした茶色くビスケットのような形が特徴。


最後に

 国を超えてフランスまでたどり着いたマカロン。アーモンドパウダー、砂糖、卵白という基本の材料は変わらずとも、時を経て、さまざまな街や地域で特徴のある伝統菓子となりました。そして今もなお、世界中のパティシエによって新たなマカロンが生み出され続けています。フランスを旅しながら、新たな街でまだ出会ったことのないマカロンを発見してみるのも面白いかもしれませんね!

この記事の執筆者

エトワ編集部

ET TOI(エトワ)編集部です。皆様のお役に立つ記事を執筆します。

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